かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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作品名:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです

著者:橋本良太 原作:時野洋輔 キャラクターデザイン原案:ちり

連載誌/レーベル:MFC

出版社:KADOKAWA

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 紹介文より

就活中に事故で死にそうになった楠一之丞は異世界に転移。さらに女神の手違いにより一之丞は常人の400倍のスピードで成長する能力を授かった。あまりの成長速度に、一之丞は無職のまま異世界生活を始める。

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料で読めたので、レビューします。

 

登場人物

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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イチノジョウ
主人公。本名は楠 一之丞(くすのき いちのすけ)。

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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ハルワタート
ヒロイン。白狼族。奴隷。
「弱い相手に従うのは死より辛い」という設定のはずだが、ほぼ初対面の主人公に「私を使ってください」と営業をかけてくるチョロイン。

 

あらすじ&レビュー

異世界転移

「なろう漫画」おなじみの異世界転移モノです。
就職活動中に暴れ馬に踏み潰されて死んだ主人公が女神様のもとで目覚めます。

これ系の主人公は、後腐れがなくて都合がいいという理由からか、「両親は既になくなっている」という設定が多いのですが、この漫画の主人公は「両親は死んでいるが妹がいる」という謎設定になっています。
妹は株で大儲けしているらしいので、兄が死んでも生きてはいける設定にしてもらってはいるのですが、未成年にして両親に続き兄も死ぬという業を背負った妹には同情せざるを得ません。

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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なぜこんな設定にしたのか、何かの伏線になるんでしょうかね。

さて、主人公は「10億人にひとりの大チャンス」ということで異世界転移できることになり、チート能力も貰えることになりました。
で、女神さまの手違いもあって普通の人の400倍のスピードでレベルアップできるようになりました。

まぁここらへんは雑な「なろう漫画」テンプレですね。
「こんなもんでいいだろ」という作者の開き直りが見て取れます。
一応「取得経験値20倍」と「必要経験値20分の1」をそれぞれ別の女神から貰ったので400倍のスピードだぜ、というのがオリジナルアイデアということなんでしょうが。

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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1個の大きなチートを与えるか、小さなチートの組み合わせで大きなチートにするか、の違いでしかないと思いますが、「なるほど」と思う人は多いかもしれませんね。

 

「無職」とは?

タイトルにもなっている通り、「無職」に強いこだわりがある漫画のようなのですが、ぶっちゃけ「無職」の意味がよくわかりません。
「職業」とは、ゲームでよくある「戦士」とか「魔法使い」とかのやつで、その中に「無職」もあるわけです。
初期状態は「無職」で、行動によって様々な職業が解放され、解放された職業の中から成りたい職業を自分で選べる、という設定のようです。
主人公は、「この世界の人は生まれてすぐ平民に就職するから、誰も無職をレベル20にしたことはないだろう、だから無職には可能性がある」という謎理論により、「無職」を続けることにしました。
都合のいいことに「第一職業」を「無職」にして「第二職業」で「剣士」やら「狩人」やらの職業を選択することができたのでデメリットはないです。
それどころか、「無職」のレベルが上がると「第二職業」「第三職業」「第四職業」と、段々とたくさんの職業を付加できるようになって、いっぺんに複数の職業レベルを育てることができるみたいです。
先ほど「主人公は400倍のスピードで成長できる」と言いましたが、例えば4つの職業を同時に鍛えられるということならば、「普通の人より1600倍のスピードで成長できる」ということになると思います。
「無職」にはデメリットがないどころか、めちゃくちゃメリットありました。
これは主人公の予想通りだったわけですが、作者様の作った世界で、作者様の分身である主人公だからこそ気付けた仕様というヤツです。

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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「結局、異世界でも無職のままなのか…」
「第二職業」には普通にちゃんとした職業を入れられるわけですし、溜息をつくような事態じゃないですよね。
そもそも「無職」を続けるかどうかは完全に自分次第なわけですし。
タイトルからして、成長チートあるのに無職、不遇っていう流れにしたいんだとは思うんですが、完全にタイトル詐欺だと思います。

※「無職」と他の職業を同時に就ける時点で「『無職』って一体何なの?」と思う人が多いかと思いますが(ていうか私もそうだったのですが)、「無職」を「求職者」とでも置き換えると割と理解はできるかなと思いました。
一度無職」をやめると二度と「無職」には戻れないという設定は意味不明ですが。

 

女奴隷を手に入れる

「無職」だと冒険者ギルドを利用できないらしく、そこに突然あらわれた奴隷商人が「だったら奴隷を代理にすればいいじゃない?」と提案してきます。
主人公は「奴隷ってイメージがあんまり…」とか言うもののもちろん利用します。
そしてもちろん女奴隷です。「なろう漫画」なら当たり前ですよね。
最初はレンタルだったのですが、なんだかんだ理由をつけて購入することに決めます。

「なろう漫画」でよくある展開ですが、なんだかんだと理屈をこねくり回して結局女奴隷を購入するという流れ、これが個人的に嫌いなんですよねぇ。
数ある「なろうテンプレ」の中でこのテンプレが一番嫌いかもしれないですね。
しかも「なんかイイ話」風にしてるのが最高に気持ち悪いです。

出典:成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです 1巻より

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「俺は…ハルを買いたい」
主人公に買われることになる女奴隷は「ハルワタート」という名前なんですが、白狼族という獣人の女戦士のようです。
ここらへんは、奴隷商人が積極的に主人公に営業をかけてくることといい異世界迷宮でハーレムを」のオマージュ?というくらいそっくりです。
で、この奴隷商人が主人公に対して至れり尽くせりしてくれます。
最初は「うわ絶対怪しいやんコイツ」と思っていたのですが、普通に親切なだけでした。
「商売なんだから親切にするの当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、あと10日経てば1000万円相当で貴族に売れるハルワタートを、300万円相当で主人公に快く売ってくれるのは商売人としてどうなの?
売る前にも、「ダンジョンで行方不明になった女性を助けるためにハルワタートを貸して」と頼みにきた主人公に対して、1000万円相当の商品を失うリスクがあるにも拘わらず、ハルワタートの意思を確認したうえで了承しますし。
ちなみにこの時主人公は、「レンタル料200万円相当払う、なんなら追加でもう200万円相当払う」というようなことを言うのですが、その後購入することになったドサクサでたぶん購入代の300万円相当しか払ってないと思います。
もともと奴隷商人が主人公に声をかけた理由も、貴族に売られる前にハルワタートを少しでも外に出してあげたいからとか言ってましたし、「良い人」としか言えないです。
まぁ正確には「主人公にとって都合が良い人」なんでしょうけどもね。

 

RPGの世界

なろう界隈では、異世界=ゲームの世界観は別に珍しくはないのですが、この漫画では女神がわざわざ「いわゆるRPGみたいな~そんな世界だよ」と説明をしてくれます。
「職業」うんぬんの話は先ほどしましたが、当たり前のようにステータス画面が出てきて、レベルやHP(生命力)、諸々の能力が数値で表現されます。
装備なんかは「剣装備スキル」を取得していないと剣も抜けない、というほど徹底しています。
モンスター(人も)はトドメさえ刺せば経験値が入りますが、戦闘が終わらないうちはレベルが上がりません。
ただし、モンスターを倒してもお金が出てくるわけではなく、魔石や素材なんかをギルドに売ってお金にするみたいで、ここだけ現実的です。
ここらへんはモンスターハンターとかの影響なんでしょうか。

 

総評と今後

最初は「ギャグ漫画」かと思って読んでたのですが、最終的に感動させにきたり、割と理屈っぽいところがあったりと、結構マジメなストーリー漫画っぽくなってきます。
絵柄がカワイイのと、シリアスなシーンの直後でもギャグ漫画のような描写をしたりしてくるので微妙ですが。

この漫画のウリと思われる「成長チート」に関しては、次々に新しいスキルを覚えていくのはなんだかんだ言って楽しいですね。
よくも悪くも「なろう漫画」のテンプレの持ち味が出てると思います。

主人公のキャラクターは、イキリ系でもヤレヤレ系でもないですし、悪くはないと思います。まぁまだ俺TUEEEするほど強くなってないからってのもあるかもしれませんが。

今巻はほぼ丸々「女奴隷購入イベント」だったので、個人的には嫌悪感が割と高めになってしまいましたが、それが終わった次巻以降はもっと楽しめるのかもしれません。