かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】異世界チート魔術師 1巻

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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作品名:異世界チート魔術師

原作:内田健(ヒーロー文庫主婦の友社) 漫画:鈴羅木かりん キャラクター原案:Nardack

連載誌/レーベル:角川コミックス・エース

出版社:KADOKAWA

ジャンル:少年マンガ

ebookjapan 紹介文より

普通の高校生から、いきなり最強チートな魔術師に。火を。風を。夢のような超常現象を自らの手で生み出す感動。想像をはるかに超える圧倒的な身体能力。平和な国からやってきた太一と凛の異世界での冒険譚が始まる。

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料になっていたので、レビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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西村 太一(にしむら たいち)
主人公。高校生。運動神経とセンスはいいらしいが、面倒くさがりの帰宅部

 

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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吾妻 凛(あづま りん)
ヒロイン。高校生。小さい頃からテニスに打ち込みジュニアでは全国区の実力者。
それでいて出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデル体型の美少女。

 

あらすじ&レビュー

プロローグ:異世界転生まで

自称「モテない男子代表」の主人公「西村 太一」と、ヒロイン「吾妻 凛」は、光に包まれ、気が付くと大草原のど真ん中にいました。

「モテない男子代表」と自己紹介した主人公ですが、実際は運動神経とセンスが良いらしく、高スペックのヒロインから好意を持たれている、という完全にリア充でした。
「お前よくモテない男子代表とか自己紹介できたな」と鼻につきます。
しかし、性格は元気いっぱいで友情を大事にする、いかにも少年漫画の王道的主人公といった感じでした。

ちなみに、主人公の友人という主要人物っぽいキャラクターが登場してるんですが、彼は異世界には来ませんでした。

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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さすがにここまで紹介されて、これっきりってことはないんじゃないかと思うんですが、どうなるんでしょうね。

 

第1話:異世界にて

主人公とヒロインは、めちゃくちゃ巨大な馬の魔物に襲われます。
絶体絶命のピンチを迎えますが、突如現れた3人組の冒険者に助けてもらいました。


絶体絶命のピンチで主人公は、「俺が囮になるから、その隙に走れ」という、少年漫画の主人公としては100点満点の行動をとります。

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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咀嚼うんぬんの話はわざわざ言う必要はないですけどね。そりゃヒロインもこんな表情になりますよ
助けてくれた冒険者たちも普通に良い人達でした。
ぶっちゃけ「良い人すぎて逆に怪しい」と思いましたが、普通に良い人達でした。
特に何か取り引きをするわけでもなく、街まで連れて行ってくれて、当面の生活費まで貸してくれました。

 

冒険者ギルド

主人公とヒロインは、冒険者ギルドで魔力の適性検査を行ったところ、とんでもない素質を持っていることが判明しました。

冒険者ギルドで、「水晶に触れることによって魔力を計る」という異世界モノでは最もポピュラーな検査を受けたところ、

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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ギルドの人によると「非常に稀有」らしいのですが、異世界転移モノの主人公ではよくある結果ですね。
ただ、そもそも主人公とヒロインが2人1組で異世界転生するってのが珍しいので、このことがどう作品に色をつけていくのかは楽しみではあります。

 

第2~3話:修行

特殊すぎてギルドでは手に負えないということで、「レミーア」という世界屈指の魔術師のもとで修業をすることになりました。
そして3週間後、修行は無事終了。

かつては手も足も出なかった馬の魔物を瞬殺できるほどに強くなりました。

「なろう漫画」ではこういう修行展開はあんまりないかもしれませんが、少年漫画と言えば修行ですよね。
と、その前に、まずは2人とも初めての魔法を使ってみます。
ヒロインは、ガスバーナーをイメージすることで、異世界人もビックリの安定感のある青い炎を出すことができた、という「なろう漫画」あるあるを披露します。
主人公は、身体強化魔法で地面にクレーターを作ってしまう、というこれまたあるあるネタを披露します。

ちなみに、修行シーンは省略されました。

 

第4話:事件(前編)

街に戻って冒険者になった主人公とヒロインでしたが、その翌日に、たまたま宿泊した宿屋の娘が何者かに攫われるという事件が発生します。
3人組の冒険者が助けに行きますが、その3人もピンチになってしまい、あわやと言うところで主人公とヒロインが助けに入りました。

第1巻の山場となるエピソードです。
「なろう漫画」の主人公としてはだいぶ遅くなりましたが、ここでようやく主人公が無双する俺TUEEEシーンが見られるか、といったところで宿屋の娘を人質にされてしまいました。

 

第5話:事件(後編)

主人公とヒロインは二手に分かれることになり、ヒロインの方は危なげなく敵を倒すことに成功しますが、主人公の方は宿屋の娘を人質にとられ、抵抗できずサンドバッグにされてしまいました。
しかしヒロインが到着し人質を助けたことにより、本気を出せるようになった主人公が敵を倒し、事件は無事解決しました。

修行の時から薄々と感じてはいたのですが、ヒロインが色々な魔法を使えるのに対して、主人公ができるのは身体強化くらいなので、主人公の方が魔力は大きいという設定なのですが、使い勝手が悪い感じがします。
まぁ主人公が手も足も出せずにいたのは人質がいたからなので、しょうがないっちゃしょうがないのですが、ヒロインだったら最初から魔法で解決できたんじゃないかな、と思えてしまいます。
「打たれ強さ」と「回復力」と「パンチ力」という、一通りの強さは見せつけた形にはなっているのですが、主人公の凄さがいまいち読者には伝わってこなかったですね。
演出と画力次第では、もしかしたらこんなんでもなんとかなったのかもしれませんが、ヒロインが助けに来るまでフルボッコにされる主人公の姿は、打たれ強さよりも、手も足も出せないダサさの方が個人的には上回ってしまいました。

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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傷みを感じないという設定でもあれば印象は違ったかもしれませんが、いくら後で全回復できると言っても、この時点で痛い思いをしている以上は強がりにしか見えません。

他にも色々ツッコミたいことはあるのですが、一番気になったところだけ紹介します。
作者がどういう考えでこうしたのかわかりませんが、「バティスタ」っていう、主人公をボコボコにした巨人族みたいなヤツの処遇を、

出典:異世界チート魔術師 1巻より

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これで済ませたのが納得いきませんでした。
「犯罪に手を貸したのは強いヤツと戦いたいだけだったから」っていう理由だと罪が無いっていう考えなんでしょうか。
これは作者の道徳観が気になるところですね。
ちなみに他の犯人たちは「ギルドに預けた」らしいのですが、具体的にどうなったかがわからないので、それも若干モヤっとするところです。

 

総評と今後

「なろう漫画」の異世界転移モノをベースに、少年漫画の王道を組み合わせた漫画、という感じの作品でした。
異世界に来てすぐに強いわけではなく、修行を通して強くなり、敵との戦闘もピンチになってからヒロインと協力して勝利するという、だいぶ丁寧なストーリー作りをしているなと感じました。
タイトルで「チート」をうたっている割には、ただただ主人公に無双させるだけのストーリーにはなっておらず、「友情・努力・勝利」の少年漫画の王道を意識したように思えます。
主人公のキャラクターも「ヤレヤレ系」ではなく、「積極的に人助けをする熱い男」という感じですし、古き良き少年漫画の主人公といった感じです。
ヒロインも明確になってるので、ハーレム展開にはならないように思いますし、「元の世界に戻る」という明確な目標を作っているので、目的の無いのんびり異世界生活という感じにもならないんじゃないでしょうか。

と、これだけ聞くと、だいぶ好感を持てる作品のように思えますが、面白いかどうかはまた別の話になります。
個人的には、どこかで見たようなキャラクターとストーリーで、先の展開もなんとなく読めるし、丁寧に話を進めることも、好感は持てども「かったるい」と思う要素となってしまったように感じました。
異世界の設定もよくあるファンタジー世界ですし、「先が気になる」と思う要素が少ないまま話だけが進行していった感じがします。

一応、終盤に出てきた敵はいい感じでゲスかったですし、裏で手を引いている存在もいるようなので、2巻以降は話が広がって面白くなる可能性はあると思います。
まぁ1巻は主人公の紹介と今後の準備にページの大部分を使ってしまったので、よくあるパターンになってしまったのかもしれませんね。