かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】八男って、それはないでしょう! 1巻

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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作品名:八男って、それはないでしょう!

著者:楠本弘樹 原作:Y.A キャラクター原案/デザイン:藤ちょこ

連載誌/レーベル:MFC

出版社:KADOKAWA

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

商社マンだった信吾が目を覚ますとそこは異世界――。信吾が転生したのはヴェンデリンという辺境の貧乏騎士爵家の八男だった。なにもなければ人生詰むような状況で、彼は魔法という才能を頼りに独立を目指す!!

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料で読めるのでレビューをしたいと思います。

 

登場人物

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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ヴェル
フルネームはヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター。
主人公。異世界転生者。ど田舎の貧乏騎士爵家の八男。魔法使いとして特待生に。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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エル
フルネームはエルヴィン・フォン・アルニム。
主人公の同級生。騎士爵家の五男。剣の腕で特待生に。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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イーナ
フルネームはイーナ・ズザネ・ヒレンブラント。
主人公の同級生。槍術の使い手で特待生。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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ルイーゼ
フルネームはルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク。
主人公の同級生。魔闘流の特待生。

 

あらすじ&レビュー

異世界転生?

「なろうテンプレ」の一つ、異世界転生モノです。

おそらく会社員だった主人公は寝てる間に死んでしまい、ファンタジー世界の「ど田舎の貧乏騎士爵家の八男」に転生しました。
「このままでは人生が詰んでしまう」と考えた主人公は、12歳で「冒険者予備校」に入学しました。
物語は、そんな主人公が生活費を稼ぐために訪れた森で、友人と一夜を明かしたところから始まります。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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なんだか「ゆうべはお楽しみでしたね」と言いたくなるようなページですが男同士です。

 

原作ではあった幼少期エピソードがごっそり削られています。
なので若干わかりにくいのですが、どうやら5歳の時に転生したことに気付いたようです。
と思ったのですが、一応原作を確認したところ、そうではなくて「5歳の子供の体に乗り移った」と言ってます。う~ん…まぁ本人がそう思ったっていうだけですし、どっちでも物語に大した違いはなさそうなのでスルーします。
寝てる間に死んだのかどうかも、原作を読んでもよくわかりませんでした。

 

ヒロインを助けるエピソード

「なろうテンプレ」の一つ、ヒロインを助けるエピソードです。

狩りの途中、狼に襲われている女の子2人を助けて、そのうえ食事まで御馳走しました。

 

さらっと読んだときはこの女の子たちをチョロイン(チョロいヒロイン)だと思ったのですが、こうして見ると主人公もなかなかの「やり手」ですね。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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「ふたりとも女子だな」「ああ、女子だ」
助ける直前にしてるこの会話も、そう考えるとなんだか恐ろしいです。

ただまぁ一応フォローを入れると、偶然ですがクラスメイトでした。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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クラスメイト(12歳)の食事会がこんな感じなのか自信ないですが。

 

第2話:魔法のお師匠様

食事中、主人公がどうしてそんなにスゴイ魔法を使えるようになったのか、という話になり、過去の回想が始まります。
主人公が転生して間もなくの頃、「アルフレッド・レインフォード」というスゴイ魔法使いの幽霊と出会って魔法の訓練を受けたからでした。

 

ここらへんの話は都合よすぎだなぁ」と思いました。

異世界転生した主人公が、幼少の頃から前世の知識と大人の精神を利用して、試行錯誤と訓練を積み重ねて強くなる。
というのは異世界転生モノではよくある流れですが、
そこに確率の低い偶然が重なると、一気に「都合がよすぎ」感が出ちゃうんですよね。
「ただでさえラッキー状態なのに、さらにそんなラッキーが起きるの?」と。

これが「やる気と才能のある我が子を見た親が、優秀な家庭教師を連れてきた」という話だったら、それは偶然じゃなくて、理由のある流れだからいいんですよ。

ですが、今回の場合は
本来であれば家庭教師として連れてこれるレベルじゃないスゴイ魔法使いが、
たまたま主人公が転生してくる数年前に、この近辺で死んでおり、
誰かに魔法の知識を授けたいと思って幽霊になっていた。
という、主人公のために用意されたスーパーレアケースですからね。

どうしても主人公を強くしたくてこういう展開にしたんでしょうが、読者にバレないようにやってほしいです。

 

第3~4話:パーティー結成

なんだかんだで主人公とエル、イーナ、ルイーゼの4人でパーティを組むことになりました。
しかし、そこに待ったをかける女子が現れ、「害獣狩りの数」で勝った方が主人公とパーティを組めるという主人公を取り合う勝負が始まりました。

 

このエピソードで、彼らの成績が推測できます。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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おそらく、こうでしょう。
 1位、ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
 2位、イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
 3位、エルヴィン・フォン・アルニム
 4位、ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
さて、これを偶然と片付けてしまっていいのでしょうか。
主人公とエルは席が隣だったことで友人になり、ヒロイン2人はたまたま森で助けただけ。
そうやって出会ってパーティを組んだ4人がたまたま成績トップの4人だったと?
主人公の人生を楽にするために用意された優秀な仲間たちにしか思えません。
まぁそれはそれでいいんですよ。
「優秀な順にチームを組む」という納得できる理由で物語が進んでいれば。
それを偶然という形にしてしまうのでご都合主義だと思われてしまうんでしょう。

 

第5話:当代ブライヒレーダー辺境伯

ライヒレーダー辺境伯のパーティーに招待された主人公は、そこで「ブランターク・リングスタット」という魔法使いを紹介されました。
彼はアルフレッド・レインフォード(例の主人公に魔法を教えるために幽霊になってた人です)の師匠でした。
で、アルフレッドの最期を彼に伝え、その時に貰っていた大量の物資を領主に返して(もともとは領主のものだったので)、かわりに20億円と豪邸を貰いました。

 

いやぁイージーモードの人生ですな。
主人公は「この世界じゃ使い道が限られてるし、大金を持つイミもないんだが」と考えますが、そんなわけありますか?イヤミにしか聞こえませんよ。

 

総評と今後

主人公のために用意された世界で快適な人生を送るという、まぁ「なろう漫画」ではよくある漫画でした。
ただ、最近ではここまで楽すぎる展開はそんなにないような気もします。
遡ると「異世界はスマートフォンとともに。」がこんな感じだったと思いますね。
で調べてみたら、
異世界はスマートフォンとともに。」が2013年4月に小説版連載開始、
八男って、それはないでしょう!」が2013年6月に小説版連載開始だったので、
やっぱりこの頃にこんな感じのものが多かったんでしょう。
(ちなみに「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」は2012年9月でした)

その後だんだんと、追放モノなどの酷い目にあったところから逆転するパターンの「なろう小説」が増えたように記憶しています。
なので今の感覚だと、この漫画の(少なくとも)1巻は、ほんとにただただ主人公の成功話を見せられてるだけという感覚になりますね。

 

と、随分と辛口のように聞こえるかもしれませんが、「それが駄目」というつもりはないです。
「なろう小説」はそんな「自分が異世界に行ったらこんなふうな楽しい人生が送りたい」という欲望を書いたり読んだりする場でもあるのでしょうし。
「12歳の学生が、これから何かを成し遂げていく」
そんな成功話=英雄譚を見せられるのも悪くはないんじゃないでしょうか。