かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】刻刻 全8巻

出典:刻刻 1巻より

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作品名:刻刻

漫画:堀尾省太

連載誌/レーベル:モーニング・ツー

出版社:講談社

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

佑河樹里(ゆかわ・じゅり)は失業中の28歳。家では父・貴文(たかふみ)と兄・翼(つばさ)、じいさん三代のダメ男がヒマを持て余している。ある日、甥・真(まこと)が翼とともに誘拐される。身の代金を渡す期限に間に合わなくなった時、じいさんは佑河家に代々伝わるという「止界術」を使い、世界を“止めた”。だがあり得ないことに、救出に向かった先で樹里たちは自分たち以外の“動く”人間に襲撃される。そしてパニックの中、異形の存在「管理人」が現れ…。

メチャクチャ完成度の高いオススメ漫画です。
既に完結しておりますが、全8巻という程よい長さということもあり、何度も読みたくなる名作です。
ということで、全8巻の見どころをレビューしたいと思います。

 

ざっくりとしたあらすじ

主人公一族には、時間を止めることができる石が代々受け継がれてきました。
これは、止まった時間の中で巻き起こった、その石を手に入れようとする宗教団体と主人公たちによる戦いのお話です。

 

見どころ

「止界」

時間を止める力「止界術」の設定が素晴らしいです。
まぁこの漫画では「時間を止める」というよりも「一瞬の中に入り込んでその中で動き回る」という感じで描かれています。
その「一瞬」=「時間が止まった世界」のことを「止界」と呼んでいます。

「時間を止める」というとSFチックなイメージを思い浮かべる人も多いかと思いますが、この漫画では、「代々伝わってきた術」とし、それを追いかけるのも「古くからある宗教団体」という感じで、古風というかノスタルジックというか和風ファンタジーのような雰囲気で私好みです。

「止界術」を使うと「霊回忍(タマワニ)」という霊魂のようなものが体に融合します。
それにより術者は「止界」を動き回ることができるのですが、もし術者が精神に異常をきたした場合、「神ノ離忍(カヌリニ)」というバケモノにさせられてしまいます。
「神ノ離忍」は、「止界」で動き回る者が「止者」を殺そうとすると現れ、殺意をもった者を殺す「止界の番人」のような存在です。
それらは「創始者」によって書かれた「大円行記」に記されており、宗教団体「実愛会」の教祖「佐河家」に、「属石」とともに伝わっていました。
一方、「本石」を持っていた主人公の家「佑河家」では、そういった詳しい話は伝わっておらず、「神ノ離忍」のことは「管理人」、「霊回忍」のことは「クラゲ」と呼ぶなど、ごくごく普通の所帯じみた一般家庭という感じです。

という少年心も中年心もくすぐる設定とワードの数々が満載です。
ちなみに、術を使うときに「衛盒(エイゴウ)」と唱えるのですが、それもカッコイイですね。
「衛」は「まもる。周りを取り囲む。」という意味で、「盒」は「ふた」という意味の漢字でした。

全8巻でキレイにまとまってる漫画ですが、これらの設定はこれだけで終わらせるのはもったいないので是非、続編をお願いしたいです。
明らかになっていない謎や過去も結構ありますし。

 

登場人物

登場人物の個性が一人一人立っていて素晴らしいです。
漫画的な個性というよりも、リアリティのある個性という感じで、「あーコイツならこういう言動するわー」という感じです。
主要キャラだけじゃなく、ちょい役でもそうなので、それぞれのキャラに注目しながら読み直すと新たな発見があったりして楽しいです。

というわけでいきなりですが、私の好きなキャラクタートップ10と各々のハイライトシーンを発表したいと思います。

次点。柴田(しばた)
実愛会の信者で、教祖に次ぐナンバー2っぽいです。
信者という割にはガラが悪く、雇われチンピラを集めたのもコイツみたいです。
「実愛」という文字の入った服を着ながらの暴力やゲス発言。
「止界術」を手に入れたい理由も、佐河いわく「止界術で暗殺請負人になってそこそこの金を稼いで満足しようとしている」という信念も理念もないクズ野郎です。
最後にはいい死にっぷりで追い上げましたが惜しくもトップ10には入らず。

出典:刻刻 3巻より。全読者が歓声をあげるであろうシーン

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10位。佑河 翼(ゆかわ つばさ)
主人公の兄。引きこもりニート
漫画的には、いかにも活躍しそうなキャラだったのですが早々と戦線離脱。
同情票でランキング入りです。

出典:刻刻 3巻より。実愛会信者を返り討ちにしたシーン

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9位。加藤(かとう)
実愛会に雇われたチームのリーダーっぽい人。できる男感がモノスゴイです。
活躍しそうなフラグを立てた直後に戦線離脱するのは笑えます。

出典:刻刻 3巻より。活躍しそうなフラグを立てたシーン

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8位。間島 翔子(まじま しょうこ)
実愛会に「止界」や佑河家の情報を提供した女性です。
はじめはイケ好かない悪い女という感じでしたが、実はかわいそうな女の子でした。

出典:刻刻 4巻より。クールだった間島が感情を爆発させたシーン

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7位。宮尾(みやお)
実愛会の信者。大人しい男かと思ったら過激派でした。
「止界術」を使って世界を良くしようと思っているみたいですが、やり方は「私利私欲で世界を支配する連中を潰す」とかそういった方向っぽいです。
リアルでいたらヤバい奴ですが、漫画で見る分には嫌いじゃないキャラです。

出典:刻刻 6巻より。初期の大人しい姿からは想像もできないシーン

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6位。佐河 順次(さがわ じゅんじ)
実愛会の若き教祖。実は「世直し」的なものには興味はなく、「止界術」を求めた本当の目的は「永く世界を見ること」でした。
探求心ゆえという動機はわからんではないですが、教祖という悠々自適な生活を捨て、自分の体で実験するリスクを冒してまで行動に移すところに、彼の異常性を感じます。

出典:刻刻 4巻より。人間をやめようとしてるシーン

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5位。潮見(しおみ)
実愛会に雇われた中の一人。キレ者。クールな現実主義者といったタイプ。
佐河の目的に理解を示し協力するも、あくまで自分優先というクールっぷり。
キャラクター的には一番好きかもしれないです。
盗撮などの技術面を担当していましたが、実は意外と動ける男でした。

出典:刻刻 6巻より。意外と動けることを見せつけたシーン

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4位。迫(さこ)
実愛会に雇われたチームの一人。
間島に惚れたのか同情したのか、どんどん良い人っぽい感じになっていきます。
迫君の心情の変化はこの漫画の見どころの一つです。

出典:刻刻 5巻より。間島が落ちたと思って焦って駆け寄るシーン

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3位。佑河 貴文(ゆかわ たかふみ)
主人公の父親。リストラされて以来、中年ニートに。
いかにものほほんとした風体の親父ですが、意外とヤバい男でした。

出典:刻刻 7巻より。倒れてる相手を一瞬のとまどいも無く軽やかにとどめを刺すシーン

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2位。佑河 樹里(ゆかわ じゅり)
主人公。決断するのが速く、行動するのも速い。
他者から「霊回忍」を追い出し「止者」にすることができる能力を持っています。

出典:刻刻 5巻より。兄を救うため一瞬のとまどいもなく敵前に飛び出すシーン

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1位。じいさん(名前不明)
主人公の祖父。「止界術」の継承者。
「止界」では「瞬間移動」ができるため大活躍します。
ジャージを着た爺さんが大活躍する姿は憧れます。単純にカッコイイです。

出典:刻刻 1巻より。瞬間移動をしたシーン

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オマケ。帽子の男(名前不明)
実愛会に雇われたチームの一人。
名前も出てこない雑魚キャラですが、死にっぷりが素晴らしかったので紹介します。

出典:刻刻 2巻より。彼が最も光輝いたシーン

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間島 翔子

石を巡る戦いの他に、もう一つのドラマがあります。
それは「間島 翔子」の家族を救うドラマです。
間島には、22年前のある夜、佑河家の「止界術」に巻き込まれ、両親と兄が「神ノ離忍」になってしまうという悲劇的な過去がありました。
そんな彼女が「実愛会」に情報提供し、今回の事件につながるわけですが、彼女の目的は、主人公の能力を使い「神ノ離忍」になった家族を「止界」から解放することでした。
幼くして家族を失った少女が、どのようにして生き、どのようにして「止界術」に辿り着いたのか、22年の歳月を思い浮かべると、家族との再会シーンは涙なしでは読めません。

ただ個人的には、救うのは「兄」じゃなくて「妹」か「弟」の方がよかったんじゃないかと思うんですよね。
まぁ主人公も「兄のいる妹」で、今連載中の「ゴールデンゴールド」も主人公は「兄のいる妹」なので、もしかしたら作者が「兄妹」になんらかの思い入れがあるのかもしれませんが。
価値観は人それぞれですが、「年上の兄姉」が「年下の弟妹」を助ける、という方が万人ウケはよかったんじゃないですかねぇ。

 

総評と今後

実際にはあり得ない出来事を高いリアリティで描いたレベルの高い漫画でした。
そういう意味でも、かの名作「寄生獣」に匹敵するような漫画だと思っています。
完成度が高く、読後感もスッキリするので、何度も読みたくなるし、何度読んでも楽しめます。

そしてやっぱり続編は希望したいですね。
過去編もできそうですが、できれば後日談がいいです。
佑河家は巻き込まなくてもいいんですけど。
ただ、「佐河家」と「佑河家」の繋がりとかは気になりますね。
作中では触れてないですが「にんべん」に「左」と「右」ですからね。
あと「間島家」が「属石」持ってた件もさらっと流されてますけど、「属石」は複数あるってことですからね。「本石」も1個とは限らないでしょう。
ちなみに「本石」の中にあったのは目玉が1個、、、「あらもう1つ作れるじゃないですか」
だいたい石なしで「止界」に入れる方がいらっしゃいますし。
というわけで続編お願いします。

【漫画レビュー】八男って、それはないでしょう! 1巻

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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作品名:八男って、それはないでしょう!

著者:楠本弘樹 原作:Y.A キャラクター原案/デザイン:藤ちょこ

連載誌/レーベル:MFC

出版社:KADOKAWA

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

商社マンだった信吾が目を覚ますとそこは異世界――。信吾が転生したのはヴェンデリンという辺境の貧乏騎士爵家の八男だった。なにもなければ人生詰むような状況で、彼は魔法という才能を頼りに独立を目指す!!

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料で読めるのでレビューをしたいと思います。

 

登場人物

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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ヴェル
フルネームはヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター。
主人公。異世界転生者。ど田舎の貧乏騎士爵家の八男。魔法使いとして特待生に。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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エル
フルネームはエルヴィン・フォン・アルニム。
主人公の同級生。騎士爵家の五男。剣の腕で特待生に。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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イーナ
フルネームはイーナ・ズザネ・ヒレンブラント。
主人公の同級生。槍術の使い手で特待生。

 

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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ルイーゼ
フルネームはルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク。
主人公の同級生。魔闘流の特待生。

 

あらすじ&レビュー

異世界転生?

「なろうテンプレ」の一つ、異世界転生モノです。

おそらく会社員だった主人公は寝てる間に死んでしまい、ファンタジー世界の「ど田舎の貧乏騎士爵家の八男」に転生しました。
「このままでは人生が詰んでしまう」と考えた主人公は、12歳で「冒険者予備校」に入学しました。
物語は、そんな主人公が生活費を稼ぐために訪れた森で、友人と一夜を明かしたところから始まります。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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なんだか「ゆうべはお楽しみでしたね」と言いたくなるようなページですが男同士です。

 

原作ではあった幼少期エピソードがごっそり削られています。
なので若干わかりにくいのですが、どうやら5歳の時に転生したことに気付いたようです。
と思ったのですが、一応原作を確認したところ、そうではなくて「5歳の子供の体に乗り移った」と言ってます。う~ん…まぁ本人がそう思ったっていうだけですし、どっちでも物語に大した違いはなさそうなのでスルーします。
寝てる間に死んだのかどうかも、原作を読んでもよくわかりませんでした。

 

ヒロインを助けるエピソード

「なろうテンプレ」の一つ、ヒロインを助けるエピソードです。

狩りの途中、狼に襲われている女の子2人を助けて、そのうえ食事まで御馳走しました。

 

さらっと読んだときはこの女の子たちをチョロイン(チョロいヒロイン)だと思ったのですが、こうして見ると主人公もなかなかの「やり手」ですね。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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「ふたりとも女子だな」「ああ、女子だ」
助ける直前にしてるこの会話も、そう考えるとなんだか恐ろしいです。

ただまぁ一応フォローを入れると、偶然ですがクラスメイトでした。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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クラスメイト(12歳)の食事会がこんな感じなのか自信ないですが。

 

第2話:魔法のお師匠様

食事中、主人公がどうしてそんなにスゴイ魔法を使えるようになったのか、という話になり、過去の回想が始まります。
主人公が転生して間もなくの頃、「アルフレッド・レインフォード」というスゴイ魔法使いの幽霊と出会って魔法の訓練を受けたからでした。

 

ここらへんの話は都合よすぎだなぁ」と思いました。

異世界転生した主人公が、幼少の頃から前世の知識と大人の精神を利用して、試行錯誤と訓練を積み重ねて強くなる。
というのは異世界転生モノではよくある流れですが、
そこに確率の低い偶然が重なると、一気に「都合がよすぎ」感が出ちゃうんですよね。
「ただでさえラッキー状態なのに、さらにそんなラッキーが起きるの?」と。

これが「やる気と才能のある我が子を見た親が、優秀な家庭教師を連れてきた」という話だったら、それは偶然じゃなくて、理由のある流れだからいいんですよ。

ですが、今回の場合は
本来であれば家庭教師として連れてこれるレベルじゃないスゴイ魔法使いが、
たまたま主人公が転生してくる数年前に、この近辺で死んでおり、
誰かに魔法の知識を授けたいと思って幽霊になっていた。
という、主人公のために用意されたスーパーレアケースですからね。

どうしても主人公を強くしたくてこういう展開にしたんでしょうが、読者にバレないようにやってほしいです。

 

第3~4話:パーティー結成

なんだかんだで主人公とエル、イーナ、ルイーゼの4人でパーティを組むことになりました。
しかし、そこに待ったをかける女子が現れ、「害獣狩りの数」で勝った方が主人公とパーティを組めるという主人公を取り合う勝負が始まりました。

 

このエピソードで、彼らの成績が推測できます。

出典:八男って、それはないでしょう! 1巻より

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おそらく、こうでしょう。
 1位、ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
 2位、イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
 3位、エルヴィン・フォン・アルニム
 4位、ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
さて、これを偶然と片付けてしまっていいのでしょうか。
主人公とエルは席が隣だったことで友人になり、ヒロイン2人はたまたま森で助けただけ。
そうやって出会ってパーティを組んだ4人がたまたま成績トップの4人だったと?
主人公の人生を楽にするために用意された優秀な仲間たちにしか思えません。
まぁそれはそれでいいんですよ。
「優秀な順にチームを組む」という納得できる理由で物語が進んでいれば。
それを偶然という形にしてしまうのでご都合主義だと思われてしまうんでしょう。

 

第5話:当代ブライヒレーダー辺境伯

ライヒレーダー辺境伯のパーティーに招待された主人公は、そこで「ブランターク・リングスタット」という魔法使いを紹介されました。
彼はアルフレッド・レインフォード(例の主人公に魔法を教えるために幽霊になってた人です)の師匠でした。
で、アルフレッドの最期を彼に伝え、その時に貰っていた大量の物資を領主に返して(もともとは領主のものだったので)、かわりに20億円と豪邸を貰いました。

 

いやぁイージーモードの人生ですな。
主人公は「この世界じゃ使い道が限られてるし、大金を持つイミもないんだが」と考えますが、そんなわけありますか?イヤミにしか聞こえませんよ。

 

総評と今後

主人公のために用意された世界で快適な人生を送るという、まぁ「なろう漫画」ではよくある漫画でした。
ただ、最近ではここまで楽すぎる展開はそんなにないような気もします。
遡ると「異世界はスマートフォンとともに。」がこんな感じだったと思いますね。
で調べてみたら、
異世界はスマートフォンとともに。」が2013年4月に小説版連載開始、
八男って、それはないでしょう!」が2013年6月に小説版連載開始だったので、
やっぱりこの頃にこんな感じのものが多かったんでしょう。
(ちなみに「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」は2012年9月でした)

その後だんだんと、追放モノなどの酷い目にあったところから逆転するパターンの「なろう小説」が増えたように記憶しています。
なので今の感覚だと、この漫画の(少なくとも)1巻は、ほんとにただただ主人公の成功話を見せられてるだけという感覚になりますね。

 

と、随分と辛口のように聞こえるかもしれませんが、「それが駄目」というつもりはないです。
「なろう小説」はそんな「自分が異世界に行ったらこんなふうな楽しい人生が送りたい」という欲望を書いたり読んだりする場でもあるのでしょうし。
「12歳の学生が、これから何かを成し遂げていく」
そんな成功話=英雄譚を見せられるのも悪くはないんじゃないでしょうか。

 

【漫画レビュー】俺だけレベルアップな件 1巻

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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作品名:俺だけレベルアップな件

作:DUBU(REDICE STUDIO) ・ Chugong

出版社:piccomics

ジャンル:少年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

十数年前、異次元と現世界を結ぶ通路”ゲート”というものが現れてからハンターと呼ばれる覚醒者たちが出現した。 ハンターはゲート内のダンジョンに潜むモンスターを倒し対価を得る人たちだ。しかし全てのハンターが強者とは限らない。 人類最弱兵器と呼ばれるE級ハンター「水篠 旬」 母親の病院代を稼ぐため嫌々ながらハンターを続けている。 ある日、D級ダンジョンに隠された高難易度の二重ダンジョンに遭遇した「旬」は死の直前に特別な能力を授かる。 「旬」にだけ見えるデイリークエストウィンドウ…!? 「旬」ひとりだけが知ってるレベルアップの秘密… 毎日届くクエストをクリアし、モンスターを倒せばレベルアップする…!? 果たして「旬」ひとりのレベルアップはどこまで続くのかーー!!

「韓国版なろう漫画」といった感じの作品です。
実はこれ系の漫画はいくつか読んでいるのですが、レベルの高い作品が結構あります。
その中でもこの漫画は特に好きな方で、既に結構先まで読んでいます。
ただ今回は、今ebookjapanで無料で読める1巻部分だけのレビューをしてみたいと思います。

 

登場人物

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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水篠 旬(みずしの しゅん)
主人公。E級ハンター。
ハンター協会に属するハンターの中で最下級かつ最弱のハンター。

 

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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観月(みづき)
B級回復系ハンター。ヒーラー。
ランクは高いものの、精神面で弱さがあるため難易度の低いレイドにしか参加できない。

 

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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馬渕(まぶち)
C級ハンター。

 

あらすじ&レビュー

主人公と「ハンター」について

日本の「なろう漫画」でもそこそこありますが、現代を舞台にした「冒険者ギルド物」です。
この漫画では「冒険者ギルド」ではなく「ハンター協会」。
主人公たちも「冒険者」ではなく「ハンター」と呼ばれています。
そんな中で主人公の「水篠 旬」は「人類最弱兵器」と呼ばれるような弱くて有名なE級ハンターです。
そんな状態なので、周りからはバカにされますし、何度も死にかけてます。
それでもハンターを続けているのは、母親の病院代を稼ぐため、という苦労人です。

わかりやすいキャラ設定です。「最弱」ですからね。
異世界召喚モノ」だとできない(やろうと思えばできますが)「家族のため」という動機もかなり好感度アップです。
ちなみに「最弱」とされていますが、「一般人よりは強い」という設定です。

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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「ハンター」に2つの意味があるのはこれで正しいのか、原作か翻訳のミスなのか、どうなんでしょうね。まぁ大した問題ではないと思いますが。
個々の能力は「覚醒」によるところが大きく、主人公が弱いのは決して「努力不足だから」ではないのもいいですね。「努力しても報われない主人公」設定も好感度アップ要素です。
そんな苦労人な主人公の言動ですが、弱くてバカにされてるのを認めたうえで「気にしてないですよ~」的な態度をとっているのが、妙にリアリティがあって上手く描かれていると思います。

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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バカにされて「はい…ハハッ」「は~い…」からの、一人になったタイミングで「今日こそは俺もやってやる!」という決意を口にするのは、何気に良い表現だと思います。応援したくなりますね。

 

「ダンジョン」と「レイド」

ハンターは、ダンジョンに潜ってモンスターを倒すのが仕事で、そのことを「レイド」と呼んでいます。
レイドの難易度に応じて、ハンター協会がハンターを選ぶのですが、「最弱」の主人公が呼ばれるのは難易度が低いレイドのはずでした。
しかし今回は、ダンジョンの中にダンジョンがある珍しい「二重ダンジョン」となっており、おそらくイレギュラーな状態だと思われます。
本来はハンター協会に報告して指示を待つべきでしたが、パーティーの多数決により進むことになりました。嫌な予感しかしません。

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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見事なフラグまで立ててしまいました。さぁどうなるでしょうか。

 

ボスの部屋

「ボスの部屋」に辿り着きましたが、扉のある珍しい部屋で、「こんな部屋は見たことがない」そうです。
「なんか…やばそう」ですが「ここまで来て手ぶらで帰るわけにはいかない」ので、「経験豊富」な馬渕さんを信じて「いっちょやってやるか」という、恐ろしいフラグを立てまくった状態で部屋に入っていきます。

で、大方の予想通りかなりヤバい展開になるわけですが、単純に強い敵と戦うという状況ではなく、謎を解かないと死ぬという状況です。
なので「最弱」の主人公も活躍できるわけですね。
ただ、謎を解くのにじっくり考える余裕があるわけではなく、仲間たちが次々と殺されていくので、かなり緊迫感はあります。

出典:俺だけレベルアップな件 1巻より

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そして、絶望の中で第1巻は終了となります。

 

総評と今後

1巻終了時点で、オープニングの途中といった進行具合です。
主人公はまだほとんど活躍していませんし、タイトルの「俺だけレベルアップ」もしてないです。
なので残念ながら、1巻のレビューでは、この漫画の面白さはほとんどレビューできません。
ここから助かった後「主人公だけレベルアップ」していくことになりますが、本編はそこからで、面白くなっていくのもそこからですね。
たぶん2巻の後半からといったところでしょうか。

主人公のキャラクターはだいぶ好きです。
家族のために頑張る苦労人で、努力はしてるんですがなかなか報われません。
性格に関しても「丁度いい」感じです。
一般常識はちゃんと備わっていて、礼儀もちゃんとしてます。
単なる好みですが、一人称が「ボク」じゃなくて「俺」なのもいいです。

それから、ずっと先まではどうなるかわかりませんが「ハーレム要素」はなさそうです。少なくとも今読んでるところまではその気配はほとんどありません。
それも個人的には好感度高いです。
ちなみに、この漫画だけじゃなく他の「韓国版なろう漫画」もハーレム展開はあんまりないので、韓国ではそういうの人気ないのかもしれないですね。日本はなんなんでしょう。。。

画力はめちゃめちゃ高いですね。
Webマンガやアニメーションを作っている会社が制作してるらしいので、全編フルカラーですし、このクオリティなのも納得です。
日本の漫画家も大物さんのところは、大勢のアシスタントがいて会社みたいになってるようですが、漫画もどんどん個人じゃなくチームとして制作していくようになっていくんでしょうかね。

 

今回は1巻だけのレビューとなりましたが、この先、私が読んでいる限りでは、1巻よりも2巻、2巻よりも3巻、3巻よりも4巻、というふうに面白くなっていきます。
普通のコミックスと比べて値段は高めですが、全編フルカラーですし、韓国語を日本語に直したり、モバイル向けに描かれたものをコミックスの形にするのにもお金がかかるのでしょうがないんでしょうね。
ただ1コマ1コマが大きいからか、アクションシーンが多いからか、1冊に掲載されるエピソード量が少ない気がしますので、面白くなくなったらすぐに切ることになるかもしれないですね。

 

【漫画レビュー】カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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作品名:カット&ペーストでこの世界を生きていく

原作:咲夜(ツギクル) 漫画:加藤コウキ キャラクター原案:PiNe

連載誌/レーベル:水曜日はまったりダッシュエックスコミック

出版社:集英社

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

成人を迎えると神様からスキルと呼ばれる技能を得られる世界。15歳を迎えて成人したマインは、「カット&ペースト」と「鑑定・全」という2つのスキルを授かった。一見使い物にならないと思えた「カット&ペースト」であったが、使い方しだいで無敵のスキルになることが判明。 そのチートすぎるスキルを周りに隠しながら生きることに苦悩するマインのもとへ、突然王女様がやって来て、事態はあらぬ方向に――。スキル「カット&ペースト」で成し遂げる英雄伝説、いま開幕!

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料だったのでレビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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マイン
主人公。伝説の冒険者「英雄アレキサンドライト」にあこがれる純粋な少年。
15歳でチートスキルを与えられました。

 

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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アイシャ
典型的なチョロイン(チョロいヒロインのこと)。
「聖弓」と呼ばれた元B級冒険者。現在は冒険者ギルドの受付嬢。

 

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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シルフィードオーガス
オーガスタ王国 第一王女。「姫騎士」。第2のヒロイン?

 

あらすじ&レビュー

第1~2話:チートスキル

剣と魔法のファンタジー世界。
15歳になった主人公のマインは、「鑑定・全」と「カット&ペースト」というスキルを与えられました。
成人になった時に神様からスキルを与えられるという「なろうテンプレ」の1つですね。
で、与えられた2つのスキルですが、「なろう漫画」の中でもトップクラスでチートスキルでした。
この2つのスキルを組み合わせることによって、他者のステータスを全て覗き見ることができるうえ、そこに載っているスキルを勝手に自分の物にできます。
「他者のスキルを奪う」系の能力は「なろう漫画」ではよくある能力なのですが、「魔物を食べたら」とか「敵を倒したら」という条件がつくことが多いです。
ですが、この漫画の「鑑定・全」と「カット&ペースト」は、相手が見える状態にあればいいので、戦う前にスキルを奪っておいて無能力にした状態で戦うことができます。
それどころか戦う必要もないですから、やろうと思えばそこらへんの人の能力を奪いまくることができます。
まぁマイン君は「そんなことをしちゃいけない」と考えるような善人キャラなのでやりませんが。
とは言え、スキルは魔物からも奪えますし、とんでもないチートスキルであることには変わりありません。
本来なら1人最大3個しか持てないはずのスキルが、2話終了時点で16個になってます。1巻終了時点だと60個くらいになります。

ぶっちゃけ客観的に見ると理不尽にも程がありますが、誠実でマジメな性格の主人公に感情移入して読むなら、ここらへんの展開は爽快で楽しいです。
ただ、私はこのマイン君、あんまり好きじゃないかもしれません。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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あまりのチートスキルの恐ろしさに「ボクは一人で生きていくしかないのかな」とか言って震える主人公ですが、
ぶっちゃけ、このページを読んで「こんなチートスキル貰っといて、なに悲劇の主人公ぶってんだよ」とイラっと来てしまいました。
「悪党のスキルをガンガン奪って強くなってやる」くらいのキャラクターの方が好きですね私は。

 

第3~5話:冒険者

「人生(と書いてスキルと読む)を奪えることが知られてしまうのはマズイ」と思ったマイン君は、一人で活動する冒険者になることにしました。
最初からツッコミどころが多い漫画ですが、ここらへんから怒涛のラッシュで押し寄せてきます。

冒険者ギルドでアイシャという受付嬢がいるカウンターを利用しようとしたことで、こんな状態になります。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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「バカかあいつは」
どうやらマイン君、やらかしてしまったらしいですね。
で、1つ前のページがこちらです。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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いやいや、こりゃマイン君悪くないわ。
詳しい説明はないですが、どうやら人気受付嬢のアイシャさんのカウンターには、よっぽどの上級冒険者じゃないと行っちゃいけないみたいな暗黙のルールがあるということなんでしょう。
そんなの初心者がどうやって気付けって言うんですか。
アイシャさんも「え?」じゃないでしょ。そんなルール受け入れないでください。他の受付嬢が働いてる時に何してるんですか。仕事してください。

さらに難癖をつけてきた冒険者に殴り掛かられることになるのですが、

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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「痛そうだけど…一発殴られよう」と考えた後、アイシャさんが巻き込まれないようにスキルを使うのですが、結局殴られます。しかも死にかけます。
意味がわかりません。
「アイシャさんが殴られそうなので、自分が盾になった」とか
「避けようと思っていたがアイシャさんが後ろにいるので、殴られることにした」ならわかるんですよ。
でも実際は「殴られようと思っていて、殴られた」ですからね。
なのにギルド長に「自ら受けてアイシャを守った!!?」とか「その男の拳を正面から受け止めようとするとは、すばらしい”魂”を両親から授かったようだな」とか勝手に感心されます。
「アイシャさん関係なく、正面から受け止め(殴られ)ようとしてたんですよ」と教えてあげたいです。
ちなみにこのアイシャさん、どう見てもマイン君が避けないように押さえつけてるようにしか見えません。

その後「お詫びに」ということで、アイシャさんがマイン君の専属受付嬢になります。
専属受付嬢というのがいまいちピンと来ないのですが、私の想像通りだとすれば、アイシャさんは今後、マイン君に対する受付の仕事しかしなくなるわけですよね。
「お詫び」とは言え、D級冒険者に殴られて死にかける程度(ギルド長はそれしか見ていません)の初心者に付きっ切りって、アイシャさんはどんだけ仕事する気ないんですか。

で、この後そんなアイシャさんを巡ってトラブルが起きます。
アイシャさんをずっと狙っていたC級冒険者のライル。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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こんな態度で女が振り向いてくれると思っているライルもおかしいですが、こんな怒り狂ってるキチガイ男に対して「マイン君には他の人にはない何かを感じたんです」と言って納得してもらえると思っているアイシャさんもどうかと思います。
私には煽ってるようにしか見えないです。
案の定、ますますキレたライルはマイン君をガチで殺そうとしてきます。
マイン君は流されるまま専属受付嬢ができただけなのに。これでマジで殺されてたら理不尽すぎますよ。
ただやっぱりライルのキチガイっぷりがズバ抜けてますね。
マイン君を殺す理由が「生かしておいたらアイシャに手を出されるだろ」っていうことですが、「オマエそもそもアイシャさんに相手にされてないだろ」っていうレベルですからね。童貞サイコパスでしょうか。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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そして、巻き込まれたくないため反対し、マイン君に「逃げろ」と言っただけのパーティーメンバーまでも容赦なく殺しにかかります。

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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今まで共に戦ってきたパーティーメンバーに対してこれは……
さすがに他のメンバーも逃げ出し、ギルドに報告に行きます。当たり前だよなぁ
その結果、

出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より

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「あいつら…本当にこの俺を裏切りやがった…」
よくこんなリアクションできるなコイツ。。。

ちなみに脇腹を大きくえぐられた「アモン」は、マイン君の「回復小」であっさりと助かりました。「回復小」なのにどんだけの回復力なのよ

 

と、ツッコミどころは多々あるのですが、頭からっぽにして読む分にはまぁまぁ楽しめました。
なんだかんだでゲス野郎を返り討ちにしてプギャーする展開は強いです。
「敵同士で仲間割れをする」、「スキルが使えなくなってうろたえるゲス」、「弱いと思ってバカにしていた主人公が実は強い」など、ちゃんとポイントは押さえてると思います。

 

第6~7話:オークとの戦い

マイン君の活躍を耳にした王様の指示で、第一王女のシルフィードオーガスタがアイシャさんとともに、マイン君のもとに向かいます。
ちょうどその頃、オークの集落に捕まっている女性を助けるため、マイン君とオーク達との戦闘が開始しました。

序盤の山場というところでしょうね。
とんでもないチートスキルを持ってる割には、しっかりと苦戦します。
オーク・ジェネラルという「国の騎士団がまとめてかかってやっと倒せる魔物が3体いるうえ、前方にハイオークが多数いてジェネラルの姿が見えずスキルを奪えない、という状態ではさすがに1人では勝てないようです。

そんなピンチに王女様とアイシャが助けにきます。
実はアイシャは「聖弓」と呼ばれる元B級冒険者でした。
また王女様の方も「姫騎士」と呼ばれており、強いみたいです。

さぁこれから反撃開始だ!というところでオーク・キングが登場して1巻終了です。

 

総評と今後

「なろう漫画」入門編としてはいいんじゃないでしょうか、という感じです。
話作りの基本をしっかり押さえ、丁寧に描いてると思います。
1巻全体の構成として見ても、終盤の方に山場をもってきて、ラスト2ページにオーク・キングを登場させる、という次巻が読みたくなるような引きで終わってるのも、計算された作りだと思います。

 

ただし、「こうなるだろうな」という期待通りの展開に収まっており、「なろうテンプレ」から脱却する要素も今のところ見えてきていません。
ストーリーにもキャラクターにもクセがなさすぎて、私みたいな人間には物足りないです。
だいたい「なろうテンプレ」を丁寧に利用してるうちは、そこそこ面白くなるんですよね。だからテンプレになってるんでしょうし。
問題はこの後、テンプレをやり尽くした後に面白い展開を作れるかどうかです。
次巻以降に判定は持ち越しですが、個人的にはあまり期待はしてないですね。

【漫画レビュー】四度目は嫌な死属性魔術師 1巻

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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作品名:四度目は嫌な死属性魔術師

著者:児嶋建洋 原作:デンスケ キャラクター原案:ばん!

連載誌/レーベル:MFC

出版社:KADOKAWA

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

クラス全員が死亡する事故が起きた。そこに突然現れた神様が、全員に加護とスキルを与えて別の世界に転生させてくれるという。しかし、雨宮博人は神様の手違いでひとりだけ加護もスキルもなく転生させられてしまう。

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料だったので読んでみました。
1巻だけ読んだ時点での感想ですが、今のところなかなか面白いと思いましたので、レビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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天宮 博人(あまみや ひろと)
主人公。3度目の人生では「ヴァンダルー」という名前に。

 

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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雨宮 寛人(あめみや ひろと)
主人公のそっくりさん。主人公に逆恨みされるが、性格は良さそう。

 

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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ロドコルテ
たぶん神さま。わざわざ名前をつけているのは何かの伏線でしょうか。

 

あらすじ&レビュー

異世界転生までのあらすじ

爆弾テロによって沈没したフェリーに乗っていた乗客たちが、まとめて異世界に転生することになりました。
その中の一人、主人公の「天宮博人」は、本来貰えるはずの力も運命も幸運も、名前どころか容姿もそっくりな「雨宮寛人」に全て振り分けられしまい、マイナスからの異世界転生になってしまいました。

 

よくある神様による集団異世界転生パターンですが、この漫画の特徴は「主人公とそっくりな人に能力を割り振られてしまったため無能力で転生する」という設定です。
「主人公だけ大した能力がないので無能扱いされて仲間から追放される」的なものは結構ありますが、無能になった理由が明確になっており、その原因が神様にあるので、「神様への復讐」を目的とした復讐モノとしてスタートします。
復讐モノは古今東西、人気のあるコンテンツですし、神様のキャラクターもいいと思いました。
無能力になる経緯に「何でそこは融通利かないの?」とか疑問に思うところもあるのですが、むしろそれが神様の理不尽さを際立たせており、結果的に復讐相手として良いキャラクターになっていると思います。
それに、他の「なろう漫画」によくあるやたらと主人公にサービスしまくるパターンの神様よりも、逆にリアリティがあると思います。
神様に対して強気に迫って色んなサービスを引き出すとかも「なろう漫画」でよく見ますが、そのたびに「ナメすぎじゃないか?」と思って見ています。まぁどんな神様がリアルなのかっていうのも基準なんてないと思いますが

それから、ちょっとずつではあるのですが同級生のキャラ付けもされているので、そこらへんでもドラマを作ろうとしているのかなと期待できます。

また、主人公のそっくりさんの登場シーンが

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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伏線っぽい気がしますので、こちらでもドラマがありそうですね。
まぁ「何かありそう」と思わせて大したことないっていうパターンも「なろう漫画」では普通にありますが。

 

二度目の人生

科学と魔術が融合した異世界に転生した主人公。
特別な力は貰えなかったはずなのですが、
「これから転生する世界に存在する属性魔術はいっさい習得できない」
という設定に抜け道があったということで、その世界には存在しない「死属性魔術」という逆に特別な力を貰ってました。
ただ、「幸運」はなかったということでしょうか。酷い扱いを受け続けた挙句、同じ世界に転生していた元同級生たちに殺されてしまいました。

 

先ほど「無能力で転生」と言いましたが、あれは嘘でした。
「なろう漫画」でよくありますが、設定というか言葉尻の穴を見つけてその穴を広げてくる展開です。

 特別な力を別の人に与えられてしまったので、自分は貰えなかった
        ↓
 だからその世界に存在する属性魔術は使えない
        ↓
 だからその世界に存在しない「死属性魔術」なら使える

ぶっちゃけ「ああ言えばこう言う」状態だと思います。
普通に考えれば「死属性魔術を使う力は貰っとるやんけ」って思わないです?
それにどうも、死体以外でも「命がない物、つまり生き物以外なら何でも」操れる、という設定になってるっぽいです。結構チートですよね。
ただし、力の他に「課すべき運命」とか「身を守る幸運」も貰ってない、という設定が残っているので、まぁ「どういうこと?」とは思わないでもないですが、一応目を瞑れる範疇だとは思います。

それよりも、この2度目の人生がなかなか面白い設定でした。
「酷い扱い」というのが本当に酷い扱いで、自分の意思で体を動かせないまま10年も実験台にさせられる展開は、復讐モノとしてかなり良い振りをしていると思います。
その挙句に主人公は死んでしまうのですが、死んだことによって「死属性魔術」により自分自身の死体をアンデットとして操るという方法で自由を手に入れます。
そして実験台にしたヤツラに復讐を果たし、他の実験体を解放し、施設を脱出します。
正直、この設定でずっと続けてもらっても個人的にはいいと思いました。
ただ、施設を脱出したところで、「迎えにきてくれた仲間」だと思った元同級生たちに殺されてしまうという展開も激熱でよかったと思います。
まぁ逆恨みではあるのですが、自分の分の能力を貰い「勇者」となった雨宮寛人に対する復讐心が沸き上がる流れはよく描けていると思います。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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2度目の人生で「勇者」と呼ばれていた元同級生たち。
3度目の人生でも同じような状況になりそうです。
一人ずつ倒していく展開になるのか、仲間になったりもするのか、想像は膨らみます。

 

再び異世界転生

2度目の人生でも天寿を全うできなかった主人公の前に、再び神が現れます。
そこで、もう一度別の異世界に転生させられることを告げられますが、そこでほかの転生者を殺されることを危惧した神により、更なる制限(呪い)を与えられ転生させられました。

 

再びの理不尽により、更に復讐心を燃え上がらせる展開はいいと思います。
転生させる理由も明らかにしましたし、それなりに同情の言葉も伝えていますので、ただただいい加減な神様というだけのキャラクターではないものの、

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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このページを見れば主人公の復讐を応援したくなりますね。

 

三度目の人生

次の異世界はいわゆる剣と魔法のファンタジー世界でした。
しばらくはダークエルフの母親と幸せな生活を送っていたのですが、ある日、母親が帰ってこなくなります。
心配になった主人公は、赤ん坊ながら、2度目の人生で覚えていた「死属性魔術」を使い町に潜入します。
そしてそこで母親が拷問を受け火あぶりにされたことを知り、復讐を誓うのでした。

 

ここからがファンタジーの始まりなので、ようやく本編といったところなんでしょう。
ダークなだけの2度目の人生とは違い、コメディチックな雰囲気が出てきます。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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主人公の造形が最大の原因だとは思いますが、雰囲気はだいぶ変わりました。
まぁ好みの問題はあるとは思いますが、私は全然許容範囲内でした。
「なろう漫画」でよくあるエロい母親とのイチャコラも「誰得なの?」とは思いますが、母親との幸せな生活は殺された母親の復讐」への良い振りになっています。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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ここに至る一連のシーンは純粋にグッと来ました。

母親を殺した町の連中も、色んなタイプが描かれていて、復讐心を煽る良い振りができていると思います。元同級生らしき冒険者も出てきます。(ただ主人公よりも全然年上なので年齢設定がおかしいんですよね、違うのかな?)
ただ、殺された母親を、幽霊となって普通にコミュニケーションできるようにしたのはよくなかったと思います。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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これではせっかくの復讐心が薄まりますよ。
あまり鬱展開にしたくないっていうのがあったのかもしれませんが、コミュニケーションできるのはダメでしょう。
「母さんの仇を取るんだ!」って言ってる隣にニッコリ笑った母親がいたら冷めますよ。
そばに母親がいることによって残酷な復讐をしにくい、という可能性も考えられます。
ここまでずっと復讐への振りをうまく描いていただけに残念ですね。

 

総評と今後

母親を幽霊にしたこと以外は、復讐モノとしてなかなか良い出来だと思いました。
全体的な「神への復讐」という遠い最終目標のほかに、手の届く範囲ですぐ叶えられそうな復讐劇を作ってるのも上手いと思います。

1巻終了時点では、なかなか面白く今後にも期待できそう、という感想でした。
ただし「なろう漫画」では、「最初は面白かったのに、テンプレを一通り消化したあとワンパターンになって飽きた」とか、「結局美人奴隷仲間にすんのかよ、このパターン嫌いだわ」とか、「なんか主人公イキり出してきたわムカつく」とか、色々な脱落ポイントがあるので要注意です。

 

【漫画レビュー】めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~全5巻

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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作品名:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~

漫画:清澄炯一 考証協力:軍事法規研究会

連載誌/レーベル:角川コミックス・エース

出版社:KADOKAWA

ジャンル:少年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

「軍隊は糧を稼ぐためのシノギ。うまいメシを腹いっぱい喰うんだ―――!!」明治時代、貧困にあえぎ飢えに苦しんでいた青年・千歳は、陸軍兵舎から出た残飯を食べたことで、一日三食が支給される軍隊の存在を知る。「うまいメシを食べる」ただそれだけのために、歩兵第一連隊に志願入隊した千歳は、過酷な日露戦争に出征していくことになり――!?飯を喰らうため一人の兵が日露戦争を駆ける!本格飯戦記漫画、開戦!!

日露戦争あたりの大日本帝国陸軍の兵隊さんに焦点をあてた漫画です。
歴史好きということもあり期待をして読んでいました。
実際、途中まではよかったのですが、最終的にちょっとガッカリなことになってしまったので、そこらへんの理由をレビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~2巻より

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千歳(ちとせ)
田舎から都会に出てきたものの仕事もなく、乞食生活をしていました。
陸軍から出てきた残飯のカレーを食べて感動し、陸軍に入隊しました。

 

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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福田(ふくだ)
初登場時は二等卒の新兵。主人公の同期。
はじめは口が悪く、イヤな奴キャラかなと思っていましたが、
母親エピソードによって、主人公以上に応援したいキャラとなりました。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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渋武(しぶたけ)
初登場時は軍曹。大隊本部附 炊事掛下士
この漫画をホモくさくしている最大の戦犯。

 

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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白瀬 矗(しらせ のぶ)
初登場時は少尉。
南極探検家として有名な実在の人物がモデルです。

 

ざっくりとしたあらすじ

乞食生活をしていた主人公の千歳は、生きるために陸軍に入隊。
その後、日露戦争が勃発。千歳も戦場へ行くことになりました。
そこで偶然「白瀬矗」と出会ったことにより、北極に興味をもった千歳は、日露戦争終了後、北極探検に参加することを希望します。
しかし、外国に北極点到達を先んじられたため、心機一転、南極点を目指すことに。

 

レビュー

一兵卒視点での戦争

一兵卒視点での戦争がわかりやすく描かれているのがよかったです。
戦闘だけでなく、戦場での暮らしや戦場までの道程など、何気ないところも漫画で描かれているので、イメージしやすくなりました。

内容については「軍事法規研究会」というところが協力しているので、しっかりしてるんじゃないかと思います。たぶん

 

テーマの「軍隊飯」について

漫画のサブタイトルにもなってるように、テーマは「明治陸軍の糧食」です。
ですが、そんなに変わった料理や調理法が出てくるわけではないですね。
美味しそうに見える食べ物は結構出てきましたが、参考にしたいアウトドアグルメを期待したら間違いだと思います。
「戦場でこんなもの食べてたんだ~」っていう食糧事情を学べるという感じですかね。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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食べ物の絵が上手いので、何でもない食事でも美味そうに見えます。

 

やたらとホモくさい

この漫画、女性はほとんど出てきません。
モブキャラとしてチラッと出てくるくらいです。
そのせいかわかりませんが、男同士でキャッキャウフフする描写が結構あって、主人公のリアクションや表情も可愛らしいものが多かった気がします。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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誰得なんでしょうか。。。

 

最後まで描かれなかった日露戦争

最大のガッカリが、日露戦争が最後まで描かれなかったことです。
主人公は旅順総攻撃の途中で脱落し、奉天会戦に関しては後になってから数ページ回想として描かれたくらいでした。

 1904年 2月 8日 日露戦争開戦
 1904年11月26日 第3回旅順総攻撃←主人公はここで脱落
 1905年 1月 2日 旅順の陥落
 1905年 3月10日 奉天会戦
 1905年 9月 5日 日露戦争終戦

理想を言えば、主人公が活躍して、勝利に貢献するようなスカッとする物語が見たかったのですが、そうでなくてもせめて終戦までの様子を丁寧に描いてほしかったです。

 

何故か南極探検

何故か物語の締めは南極探検でした。
陸軍の仕事ではないので、「明治陸軍糧食物語」は全く関係ありません。
何故こういうストーリーになったんでしょうか。
「食うこと、生きること」を重要視していた主人公が、北極探検に惹かれていく流れにもイマイチ説得力がありませんでした。

第1話から既に伏線が張られていたので、途中で路線変更したわけではなく、最初から予定してたんだろうと思いますが、作者はもともとこっちを描きたかったんでしょうか。
結局、南極点には到達できず、スッキリした終わり方にもならなかったので、物語の題材として良い題材とも思えなかったんですけどね。

 

 

総評

辛口レビューになってしまいましたが、歴史好きの人や、近代の戦争について興味のある人が参考のために読むのはいいと思います。 
私もなんだかんだで買う価値はあったと思っています。

ただだからこそ最後まで日露戦争を描いてほしかったという悔いが残ります。

なんだか作者が描きたかったものと、出版社が描かせたかったものと、読者が読みたかったものが、どれもズレていたのではないでしょうか。

【漫画レビュー】辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻

出典:辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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作品名:辺境の老騎士 バルド・ローエン

漫画:菊石森生 原作:支援BIS

連載誌/レーベル:ヤングマガジン サード

出版社:講談社

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan紹介文より

「なろう系」の新感覚グルメ・エピック・ファンタジーをコミカライズ!! 大都市クラークスで老騎士バルド・ローエンの魔獣の皮を巡り殺人事件が起きた! 老騎士の旅の一行に<腐肉あさり>の異名を持つ盗賊ジュルチャガが加わり、老騎士一行は殺人事件の真相を暴く!! 旅の途中で寄ったマジュエスツ領では野生の馬・ 白羅王が暴れまわっていた。領主に間者の疑いをかけられたバルドは白羅王と共に死地に追いやられる!? 老騎士が見出した活路とは如何に!

なろう系漫画にしては渋くて硬派な良作品です。
気に入っていてずっと追っかけていた作品だったんですが、最近ちょっと気になることが出てきたので、ちょっとレビューしてみたいと思います。
 

登場人物

辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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バルド・ローエン
「人民の騎士」として名高い老騎士。

 

辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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ゴドン・ザルコス
ザルコス家当主にしてメイジア領主。
バルドを師匠と仰ぎ、旅に同行することになった。思い込みが激しい。

 

辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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ジュルチャガ
「腐肉あさり」と呼ばれる盗賊。
なんだかんだでバルドに懐いており、色々できる便利な若者。

 

5巻までのざっくりとしたあらすじ

魔獣を防ぐための巨大な壁「大障壁」に囲まれたファンタジー世界。
その壁の、ただ一カ所だけ存在する切れ目に位置するパクラ領。
最も過酷なその場所で、長い間戦い続けてきた騎士バルド・ローエンは、58歳で食べ歩目的のない旅へと出発しました。
その旅の途中、魔獣の皮で鎧を仕立てて貰っていたところ、その仕事を任せていた皮職人のポルポさんが殺人容疑で捕まったからさあ大変。

 

6巻のあらすじ&レビュー

第31~32話:殺人事件

殺人容疑で捕まったポルポさんですが、冤罪を疑った主人公たちによってスピード解決します。
ぶっちゃけここらへんの展開が早すぎだと思うんですよね。
ジュルチャガが有能すぎて真相の全てを彼があっさり解明、真犯人も尋問だけで白状させられちゃいました。
もともとそういうところはあったんですが、それほどピンチらしいピンチにならないんですよね。
特に、

出典:辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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ここをナレーションで済ませるのって勿体なくないですかね。
「マリガネンの長男」ってこのコマだけの登場ですよ。
あらかじめ登場させて主人公たちにムカつくことを言わせておいて、読者から「なんだこのクソは」と思わせたうえで、「ぴえぇえん、しゅみましぇんでしたぁぁぁ」っていうざまぁ展開を見せた方が読者は喜ぶと思うんですけどね。
まぁ一般的な「なろう漫画」ではよくあるやつなんですが、この漫画は逆に無さすぎじゃないかなと。
そこがこの漫画の良さでもあるんでしょうが、さすがにこのところあっさりしすぎなのが気になるようになってきました。

 

第33~36話:マジュエスツ領

マジュエスツ領に立ち寄った主人公たちですが、領主に招かれてしばらく滞在することになりました。
マジュエスツ領では「白羅王」と呼ばれる野生の白馬(というかユニコーン)が人を襲うという事件が多発しているほか、領主に仕える重臣が次々と奇怪な死を遂げていました。
領地の様子や、領主とその妻の態度にも疑問を持った主人公は、合流したジュルチャガに調査を依頼しました。
そんな折、領主に誘われて「白羅王」退治に同行することに・・・

というあらすじのストーリーなのですが、実はこのあらすじ部分を一話に詰め込んでいます。
領主とその妻との会話はほとんどなくナレーションで主人公の感想を言ってるだけなので、いまいち話に入り込めませんでした。
「白羅王」退治に関連するアクションシーンの後、真相の解明が行われるのですが、それもまたジュルチャガが全部やってくれました状態ですね。

一応ネタバレにならないようにこれ以上の説明はしませんが、新たな仲間ができたのでそちらは紹介したいと思います。

出典:辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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ルジュラ=ティアントと呼ばれる亜人のモウラと、精霊のスィです。
「なろう漫画」で亜人と言えば、普通の人間に申し訳程度の獣耳や尻尾をつけるだけの、コスプレにしか見えないものばっかりなのですが、この漫画ではしっかりとファンタジーチックな亜人を出してきます。

出典:辺境の老騎士 バルド・ローエン 5巻より

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コスプレ美女とキャッキャウフフしたいだけの他の「なろう漫画」と比べるのが申し訳ないですね。
ちゃんとしたファンタジー世界を描こうとする姿勢が、この漫画が良作たる所以でしょう。

それだけに1つ1つのエピソードもしっかりと描いてほしいなと思います。

 

第37~38話:シェサ領

シェサ領の領主の長男と出会った主人公一行は城に招かれました。
しかしそこで、弟に家督を継がせるため、皆に「自分が死ぬ幻覚」を見せてほしいと頼まれ・・・

というストーリーです。
このエピソードも、始まったと思ったらすぐ終わってしまいました。
今後の伏線として必要なエピソードなのかもしれませんが、味気ないエピソードが続いてる感じがします。

 

総評と今後

何度も書きましたが、駆け足で話を進めてるのが勿体ないです。
この後に壮大な物語が控えていて、そこに行くまでは必要最小限にしている、というならまだわからないではないですが、
世界観重視で、小エピソードをたくさん紹介するというコンセプトでずっと続けるなら個人的にはガッカリです。
まぁ個人的な好みの問題もあるかもしれないですが。

一応、要所要所に「はじめの人々」や「大崩壊」といったワードを用意していたり、魔剣に関しても「古代」とつながる伏線だと思うので、期待はしています。

 

最後の最後に気付きました。
巻末に次巻の予告が載ってました。

出典:辺境の老騎士 バルド・ローエン 6巻より

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これは力入れて描いて来そうな予感がします。
新章に期待ですね。