かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】四度目は嫌な死属性魔術師 1巻

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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作品名:四度目は嫌な死属性魔術師

著者:児嶋建洋 原作:デンスケ キャラクター原案:ばん!

連載誌/レーベル:MFC

出版社:KADOKAWA

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

クラス全員が死亡する事故が起きた。そこに突然現れた神様が、全員に加護とスキルを与えて別の世界に転生させてくれるという。しかし、雨宮博人は神様の手違いでひとりだけ加護もスキルもなく転生させられてしまう。

「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料だったので読んでみました。
1巻だけ読んだ時点での感想ですが、今のところなかなか面白いと思いましたので、レビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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天宮 博人(あまみや ひろと)
主人公。3度目の人生では「ヴァンダルー」という名前に。

 

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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雨宮 寛人(あめみや ひろと)
主人公のそっくりさん。主人公に逆恨みされるが、性格は良さそう。

 

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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ロドコルテ
たぶん神さま。わざわざ名前をつけているのは何かの伏線でしょうか。

 

あらすじ&レビュー

異世界転生までのあらすじ

爆弾テロによって沈没したフェリーに乗っていた乗客たちが、まとめて異世界に転生することになりました。
その中の一人、主人公の「天宮博人」は、本来貰えるはずの力も運命も幸運も、名前どころか容姿もそっくりな「雨宮寛人」に全て振り分けられしまい、マイナスからの異世界転生になってしまいました。

 

よくある神様による集団異世界転生パターンですが、この漫画の特徴は「主人公とそっくりな人に能力を割り振られてしまったため無能力で転生する」という設定です。
「主人公だけ大した能力がないので無能扱いされて仲間から追放される」的なものは結構ありますが、無能になった理由が明確になっており、その原因が神様にあるので、「神様への復讐」を目的とした復讐モノとしてスタートします。
復讐モノは古今東西、人気のあるコンテンツですし、神様のキャラクターもいいと思いました。
無能力になる経緯に「何でそこは融通利かないの?」とか疑問に思うところもあるのですが、むしろそれが神様の理不尽さを際立たせており、結果的に復讐相手として良いキャラクターになっていると思います。
それに、他の「なろう漫画」によくあるやたらと主人公にサービスしまくるパターンの神様よりも、逆にリアリティがあると思います。
神様に対して強気に迫って色んなサービスを引き出すとかも「なろう漫画」でよく見ますが、そのたびに「ナメすぎじゃないか?」と思って見ています。まぁどんな神様がリアルなのかっていうのも基準なんてないと思いますが

それから、ちょっとずつではあるのですが同級生のキャラ付けもされているので、そこらへんでもドラマを作ろうとしているのかなと期待できます。

また、主人公のそっくりさんの登場シーンが

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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伏線っぽい気がしますので、こちらでもドラマがありそうですね。
まぁ「何かありそう」と思わせて大したことないっていうパターンも「なろう漫画」では普通にありますが。

 

二度目の人生

科学と魔術が融合した異世界に転生した主人公。
特別な力は貰えなかったはずなのですが、
「これから転生する世界に存在する属性魔術はいっさい習得できない」
という設定に抜け道があったということで、その世界には存在しない「死属性魔術」という逆に特別な力を貰ってました。
ただ、「幸運」はなかったということでしょうか。酷い扱いを受け続けた挙句、同じ世界に転生していた元同級生たちに殺されてしまいました。

 

先ほど「無能力で転生」と言いましたが、あれは嘘でした。
「なろう漫画」でよくありますが、設定というか言葉尻の穴を見つけてその穴を広げてくる展開です。

 特別な力を別の人に与えられてしまったので、自分は貰えなかった
        ↓
 だからその世界に存在する属性魔術は使えない
        ↓
 だからその世界に存在しない「死属性魔術」なら使える

ぶっちゃけ「ああ言えばこう言う」状態だと思います。
普通に考えれば「死属性魔術を使う力は貰っとるやんけ」って思わないです?
それにどうも、死体以外でも「命がない物、つまり生き物以外なら何でも」操れる、という設定になってるっぽいです。結構チートですよね。
ただし、力の他に「課すべき運命」とか「身を守る幸運」も貰ってない、という設定が残っているので、まぁ「どういうこと?」とは思わないでもないですが、一応目を瞑れる範疇だとは思います。

それよりも、この2度目の人生がなかなか面白い設定でした。
「酷い扱い」というのが本当に酷い扱いで、自分の意思で体を動かせないまま10年も実験台にさせられる展開は、復讐モノとしてかなり良い振りをしていると思います。
その挙句に主人公は死んでしまうのですが、死んだことによって「死属性魔術」により自分自身の死体をアンデットとして操るという方法で自由を手に入れます。
そして実験台にしたヤツラに復讐を果たし、他の実験体を解放し、施設を脱出します。
正直、この設定でずっと続けてもらっても個人的にはいいと思いました。
ただ、施設を脱出したところで、「迎えにきてくれた仲間」だと思った元同級生たちに殺されてしまうという展開も激熱でよかったと思います。
まぁ逆恨みではあるのですが、自分の分の能力を貰い「勇者」となった雨宮寛人に対する復讐心が沸き上がる流れはよく描けていると思います。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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2度目の人生で「勇者」と呼ばれていた元同級生たち。
3度目の人生でも同じような状況になりそうです。
一人ずつ倒していく展開になるのか、仲間になったりもするのか、想像は膨らみます。

 

再び異世界転生

2度目の人生でも天寿を全うできなかった主人公の前に、再び神が現れます。
そこで、もう一度別の異世界に転生させられることを告げられますが、そこでほかの転生者を殺されることを危惧した神により、更なる制限(呪い)を与えられ転生させられました。

 

再びの理不尽により、更に復讐心を燃え上がらせる展開はいいと思います。
転生させる理由も明らかにしましたし、それなりに同情の言葉も伝えていますので、ただただいい加減な神様というだけのキャラクターではないものの、

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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このページを見れば主人公の復讐を応援したくなりますね。

 

三度目の人生

次の異世界はいわゆる剣と魔法のファンタジー世界でした。
しばらくはダークエルフの母親と幸せな生活を送っていたのですが、ある日、母親が帰ってこなくなります。
心配になった主人公は、赤ん坊ながら、2度目の人生で覚えていた「死属性魔術」を使い町に潜入します。
そしてそこで母親が拷問を受け火あぶりにされたことを知り、復讐を誓うのでした。

 

ここからがファンタジーの始まりなので、ようやく本編といったところなんでしょう。
ダークなだけの2度目の人生とは違い、コメディチックな雰囲気が出てきます。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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主人公の造形が最大の原因だとは思いますが、雰囲気はだいぶ変わりました。
まぁ好みの問題はあるとは思いますが、私は全然許容範囲内でした。
「なろう漫画」でよくあるエロい母親とのイチャコラも「誰得なの?」とは思いますが、母親との幸せな生活は殺された母親の復讐」への良い振りになっています。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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ここに至る一連のシーンは純粋にグッと来ました。

母親を殺した町の連中も、色んなタイプが描かれていて、復讐心を煽る良い振りができていると思います。元同級生らしき冒険者も出てきます。(ただ主人公よりも全然年上なので年齢設定がおかしいんですよね、違うのかな?)
ただ、殺された母親を、幽霊となって普通にコミュニケーションできるようにしたのはよくなかったと思います。

出典:四度目は嫌な死属性魔術師 1巻より

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これではせっかくの復讐心が薄まりますよ。
あまり鬱展開にしたくないっていうのがあったのかもしれませんが、コミュニケーションできるのはダメでしょう。
「母さんの仇を取るんだ!」って言ってる隣にニッコリ笑った母親がいたら冷めますよ。
そばに母親がいることによって残酷な復讐をしにくい、という可能性も考えられます。
ここまでずっと復讐への振りをうまく描いていただけに残念ですね。

 

総評と今後

母親を幽霊にしたこと以外は、復讐モノとしてなかなか良い出来だと思いました。
全体的な「神への復讐」という遠い最終目標のほかに、手の届く範囲ですぐ叶えられそうな復讐劇を作ってるのも上手いと思います。

1巻終了時点では、なかなか面白く今後にも期待できそう、という感想でした。
ただし「なろう漫画」では、「最初は面白かったのに、テンプレを一通り消化したあとワンパターンになって飽きた」とか、「結局美人奴隷仲間にすんのかよ、このパターン嫌いだわ」とか、「なんか主人公イキり出してきたわムカつく」とか、色々な脱落ポイントがあるので要注意です。