かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~全5巻

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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作品名:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~

漫画:清澄炯一 考証協力:軍事法規研究会

連載誌/レーベル:角川コミックス・エース

出版社:KADOKAWA

ジャンル:少年マンガ

ebookjapan 第1巻 紹介文より

「軍隊は糧を稼ぐためのシノギ。うまいメシを腹いっぱい喰うんだ―――!!」明治時代、貧困にあえぎ飢えに苦しんでいた青年・千歳は、陸軍兵舎から出た残飯を食べたことで、一日三食が支給される軍隊の存在を知る。「うまいメシを食べる」ただそれだけのために、歩兵第一連隊に志願入隊した千歳は、過酷な日露戦争に出征していくことになり――!?飯を喰らうため一人の兵が日露戦争を駆ける!本格飯戦記漫画、開戦!!

日露戦争あたりの大日本帝国陸軍の兵隊さんに焦点をあてた漫画です。
歴史好きということもあり期待をして読んでいました。
実際、途中まではよかったのですが、最終的にちょっとガッカリなことになってしまったので、そこらへんの理由をレビューしたいと思います。

 

登場人物

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~2巻より

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千歳(ちとせ)
田舎から都会に出てきたものの仕事もなく、乞食生活をしていました。
陸軍から出てきた残飯のカレーを食べて感動し、陸軍に入隊しました。

 

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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福田(ふくだ)
初登場時は二等卒の新兵。主人公の同期。
はじめは口が悪く、イヤな奴キャラかなと思っていましたが、
母親エピソードによって、主人公以上に応援したいキャラとなりました。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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渋武(しぶたけ)
初登場時は軍曹。大隊本部附 炊事掛下士
この漫画をホモくさくしている最大の戦犯。

 

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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白瀬 矗(しらせ のぶ)
初登場時は少尉。
南極探検家として有名な実在の人物がモデルです。

 

ざっくりとしたあらすじ

乞食生活をしていた主人公の千歳は、生きるために陸軍に入隊。
その後、日露戦争が勃発。千歳も戦場へ行くことになりました。
そこで偶然「白瀬矗」と出会ったことにより、北極に興味をもった千歳は、日露戦争終了後、北極探検に参加することを希望します。
しかし、外国に北極点到達を先んじられたため、心機一転、南極点を目指すことに。

 

レビュー

一兵卒視点での戦争

一兵卒視点での戦争がわかりやすく描かれているのがよかったです。
戦闘だけでなく、戦場での暮らしや戦場までの道程など、何気ないところも漫画で描かれているので、イメージしやすくなりました。

内容については「軍事法規研究会」というところが協力しているので、しっかりしてるんじゃないかと思います。たぶん

 

テーマの「軍隊飯」について

漫画のサブタイトルにもなってるように、テーマは「明治陸軍の糧食」です。
ですが、そんなに変わった料理や調理法が出てくるわけではないですね。
美味しそうに見える食べ物は結構出てきましたが、参考にしたいアウトドアグルメを期待したら間違いだと思います。
「戦場でこんなもの食べてたんだ~」っていう食糧事情を学べるという感じですかね。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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食べ物の絵が上手いので、何でもない食事でも美味そうに見えます。

 

やたらとホモくさい

この漫画、女性はほとんど出てきません。
モブキャラとしてチラッと出てくるくらいです。
そのせいかわかりませんが、男同士でキャッキャウフフする描写が結構あって、主人公のリアクションや表情も可愛らしいものが多かった気がします。

出典:めしあげ!! ~明治陸軍糧食物語~1巻より

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誰得なんでしょうか。。。

 

最後まで描かれなかった日露戦争

最大のガッカリが、日露戦争が最後まで描かれなかったことです。
主人公は旅順総攻撃の途中で脱落し、奉天会戦に関しては後になってから数ページ回想として描かれたくらいでした。

 1904年 2月 8日 日露戦争開戦
 1904年11月26日 第3回旅順総攻撃←主人公はここで脱落
 1905年 1月 2日 旅順の陥落
 1905年 3月10日 奉天会戦
 1905年 9月 5日 日露戦争終戦

理想を言えば、主人公が活躍して、勝利に貢献するようなスカッとする物語が見たかったのですが、そうでなくてもせめて終戦までの様子を丁寧に描いてほしかったです。

 

何故か南極探検

何故か物語の締めは南極探検でした。
陸軍の仕事ではないので、「明治陸軍糧食物語」は全く関係ありません。
何故こういうストーリーになったんでしょうか。
「食うこと、生きること」を重要視していた主人公が、北極探検に惹かれていく流れにもイマイチ説得力がありませんでした。

第1話から既に伏線が張られていたので、途中で路線変更したわけではなく、最初から予定してたんだろうと思いますが、作者はもともとこっちを描きたかったんでしょうか。
結局、南極点には到達できず、スッキリした終わり方にもならなかったので、物語の題材として良い題材とも思えなかったんですけどね。

 

 

総評

辛口レビューになってしまいましたが、歴史好きの人や、近代の戦争について興味のある人が参考のために読むのはいいと思います。 
私もなんだかんだで買う価値はあったと思っています。

ただだからこそ最後まで日露戦争を描いてほしかったという悔いが残ります。

なんだか作者が描きたかったものと、出版社が描かせたかったものと、読者が読みたかったものが、どれもズレていたのではないでしょうか。