【漫画レビュー】カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
作品名:カット&ペーストでこの世界を生きていく
原作:咲夜(ツギクル) 漫画:加藤コウキ キャラクター原案:PiNe
連載誌/レーベル:水曜日はまったりダッシュエックスコミック
出版社:集英社
ジャンル:青年マンガ
ebookjapan 第1巻 紹介文より成人を迎えると神様からスキルと呼ばれる技能を得られる世界。15歳を迎えて成人したマインは、「カット&ペースト」と「鑑定・全」という2つのスキルを授かった。一見使い物にならないと思えた「カット&ペースト」であったが、使い方しだいで無敵のスキルになることが判明。 そのチートすぎるスキルを周りに隠しながら生きることに苦悩するマインのもとへ、突然王女様がやって来て、事態はあらぬ方向に――。スキル「カット&ペースト」で成し遂げる英雄伝説、いま開幕!
「なろう漫画」です。
ebookjapanで1巻が無料だったのでレビューしたいと思います。
登場人物
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
マイン
主人公。伝説の冒険者「英雄アレキサンドライト」にあこがれる純粋な少年。
15歳でチートスキルを与えられました。
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アイシャ
典型的なチョロイン(チョロいヒロインのこと)。
「聖弓」と呼ばれた元B級冒険者。現在は冒険者ギルドの受付嬢。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
シルフィード・オーガスタ
オーガスタ王国 第一王女。「姫騎士」。第2のヒロイン?
あらすじ&レビュー
第1~2話:チートスキル
剣と魔法のファンタジー世界。
15歳になった主人公のマインは、「鑑定・全」と「カット&ペースト」というスキルを与えられました。
成人になった時に神様からスキルを与えられるという「なろうテンプレ」の1つですね。
で、与えられた2つのスキルですが、「なろう漫画」の中でもトップクラスでチートスキルでした。
この2つのスキルを組み合わせることによって、他者のステータスを全て覗き見ることができるうえ、そこに載っているスキルを勝手に自分の物にできます。
「他者のスキルを奪う」系の能力は「なろう漫画」ではよくある能力なのですが、「魔物を食べたら」とか「敵を倒したら」という条件がつくことが多いです。
ですが、この漫画の「鑑定・全」と「カット&ペースト」は、相手が見える状態にあればいいので、戦う前にスキルを奪っておいて無能力にした状態で戦うことができます。
それどころか戦う必要もないですから、やろうと思えばそこらへんの人の能力を奪いまくることができます。
まぁマイン君は「そんなことをしちゃいけない」と考えるような善人キャラなのでやりませんが。
とは言え、スキルは魔物からも奪えますし、とんでもないチートスキルであることには変わりありません。
本来なら1人最大3個しか持てないはずのスキルが、2話終了時点で16個になってます。1巻終了時点だと60個くらいになります。
ぶっちゃけ客観的に見ると理不尽にも程がありますが、誠実でマジメな性格の主人公に感情移入して読むなら、ここらへんの展開は爽快で楽しいです。
ただ、私はこのマイン君、あんまり好きじゃないかもしれません。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
あまりのチートスキルの恐ろしさに「ボクは一人で生きていくしかないのかな」とか言って震える主人公ですが、
ぶっちゃけ、このページを読んで「こんなチートスキル貰っといて、なに悲劇の主人公ぶってんだよ」とイラっと来てしまいました。
「悪党のスキルをガンガン奪って強くなってやる」くらいのキャラクターの方が好きですね私は。
第3~5話:冒険者
「人生(と書いてスキルと読む)を奪えることが知られてしまうのはマズイ」と思ったマイン君は、一人で活動する冒険者になることにしました。
最初からツッコミどころが多い漫画ですが、ここらへんから怒涛のラッシュで押し寄せてきます。
冒険者ギルドでアイシャという受付嬢がいるカウンターを利用しようとしたことで、こんな状態になります。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
「バカかあいつは」
どうやらマイン君、やらかしてしまったらしいですね。
で、1つ前のページがこちらです。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
いやいや、こりゃマイン君悪くないわ。
詳しい説明はないですが、どうやら人気受付嬢のアイシャさんのカウンターには、よっぽどの上級冒険者じゃないと行っちゃいけないみたいな暗黙のルールがあるということなんでしょう。
そんなの初心者がどうやって気付けって言うんですか。
アイシャさんも「え?」じゃないでしょ。そんなルール受け入れないでください。他の受付嬢が働いてる時に何してるんですか。仕事してください。
さらに難癖をつけてきた冒険者に殴り掛かられることになるのですが、
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
「痛そうだけど…一発殴られよう」と考えた後、アイシャさんが巻き込まれないようにスキルを使うのですが、結局殴られます。しかも死にかけます。
意味がわかりません。
「アイシャさんが殴られそうなので、自分が盾になった」とか
「避けようと思っていたがアイシャさんが後ろにいるので、殴られることにした」ならわかるんですよ。
でも実際は「殴られようと思っていて、殴られた」ですからね。
なのにギルド長に「自ら受けてアイシャを守った!!?」とか「その男の拳を正面から受け止めようとするとは、すばらしい”魂”を両親から授かったようだな」とか勝手に感心されます。
「アイシャさん関係なく、正面から受け止め(殴られ)ようとしてたんですよ」と教えてあげたいです。
ちなみにこのアイシャさん、どう見てもマイン君が避けないように押さえつけてるようにしか見えません。
その後「お詫びに」ということで、アイシャさんがマイン君の専属受付嬢になります。
専属受付嬢というのがいまいちピンと来ないのですが、私の想像通りだとすれば、アイシャさんは今後、マイン君に対する受付の仕事しかしなくなるわけですよね。
「お詫び」とは言え、D級冒険者に殴られて死にかける程度(ギルド長はそれしか見ていません)の初心者に付きっ切りって、アイシャさんはどんだけ仕事する気ないんですか。
で、この後そんなアイシャさんを巡ってトラブルが起きます。
アイシャさんをずっと狙っていたC級冒険者のライル。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
こんな態度で女が振り向いてくれると思っているライルもおかしいですが、こんな怒り狂ってるキチガイ男に対して「マイン君には他の人にはない何かを感じたんです」と言って納得してもらえると思っているアイシャさんもどうかと思います。
私には煽ってるようにしか見えないです。
案の定、ますますキレたライルはマイン君をガチで殺そうとしてきます。
マイン君は流されるまま専属受付嬢ができただけなのに。これでマジで殺されてたら理不尽すぎますよ。
ただやっぱりライルのキチガイっぷりがズバ抜けてますね。
マイン君を殺す理由が「生かしておいたらアイシャに手を出されるだろ」っていうことですが、「オマエそもそもアイシャさんに相手にされてないだろ」っていうレベルですからね。童貞サイコパスでしょうか。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
そして、巻き込まれたくないため反対し、マイン君に「逃げろ」と言っただけのパーティーメンバーまでも容赦なく殺しにかかります。
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
今まで共に戦ってきたパーティーメンバーに対してこれは……
さすがに他のメンバーも逃げ出し、ギルドに報告に行きます。当たり前だよなぁ
その結果、
出典:カット&ペーストでこの世界を生きていく 1巻より
「あいつら…本当にこの俺を裏切りやがった…」
よくこんなリアクションできるなコイツ。。。
ちなみに脇腹を大きくえぐられた「アモン」は、マイン君の「回復小」であっさりと助かりました。「回復小」なのにどんだけの回復力なのよ
と、ツッコミどころは多々あるのですが、頭からっぽにして読む分にはまぁまぁ楽しめました。
なんだかんだでゲス野郎を返り討ちにしてプギャーする展開は強いです。
「敵同士で仲間割れをする」、「スキルが使えなくなってうろたえるゲス」、「弱いと思ってバカにしていた主人公が実は強い」など、ちゃんとポイントは押さえてると思います。
第6~7話:オークとの戦い
マイン君の活躍を耳にした王様の指示で、第一王女のシルフィード・オーガスタがアイシャさんとともに、マイン君のもとに向かいます。
ちょうどその頃、オークの集落に捕まっている女性を助けるため、マイン君とオーク達との戦闘が開始しました。
序盤の山場というところでしょうね。
とんでもないチートスキルを持ってる割には、しっかりと苦戦します。
オーク・ジェネラルという「国の騎士団がまとめてかかってやっと倒せる魔物」が3体いるうえ、前方にハイオークが多数いてジェネラルの姿が見えずスキルを奪えない、という状態ではさすがに1人では勝てないようです。
そんなピンチに王女様とアイシャが助けにきます。
実はアイシャは「聖弓」と呼ばれる元B級冒険者でした。
また王女様の方も「姫騎士」と呼ばれており、強いみたいです。
さぁこれから反撃開始だ!というところでオーク・キングが登場して1巻終了です。
総評と今後
「なろう漫画」入門編としてはいいんじゃないでしょうか、という感じです。
話作りの基本をしっかり押さえ、丁寧に描いてると思います。
1巻全体の構成として見ても、終盤の方に山場をもってきて、ラスト2ページにオーク・キングを登場させる、という次巻が読みたくなるような引きで終わってるのも、計算された作りだと思います。
ただし、「こうなるだろうな」という期待通りの展開に収まっており、「なろうテンプレ」から脱却する要素も今のところ見えてきていません。
ストーリーにもキャラクターにもクセがなさすぎて、私みたいな人間には物足りないです。
だいたい「なろうテンプレ」を丁寧に利用してるうちは、そこそこ面白くなるんですよね。だからテンプレになってるんでしょうし。
問題はこの後、テンプレをやり尽くした後に面白い展開を作れるかどうかです。
次巻以降に判定は持ち越しですが、個人的にはあまり期待はしてないですね。