かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【ゲームレビュー】The Last of Us Part II

作品名:The Last of Us Part II(ラストオブアス2・ラスアス2)

対応機種:PlayStation 4

開発元:ノーティードッグ

発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

Playstation.comより

謎の感染爆発によって変わり果てたアメリカを横断した危険な旅路から5年、エリーとジョエルはワイオミング州ジャクソンで暮らしていた。生き残った者たち(生存者たち)によるコミュニティーは順調に発展し、二人は安らぎと落ち着きを取り戻したかのように見えた。もちろん、さまざまな危険は存在する。感染者とそれ以外――惨めな境遇にいる他の生存者たちだ。そして、あるすさまじい出来事が平和を崩壊させたとき、エリーの無慈悲な旅が再び始まる。裁きを下し、すべてを終わらせるために。ひとり、またひとりと、標的を追い詰めてゆくエリーが見出したのは、自らの行いによって生み出された、心と身体を揺さぶる凄惨な連鎖だった。 

世界中で物議をかもしていると噂のゲームです。
いつもは漫画レビューしかしていないのですが、今回は私も衝撃を受けた人間の一人として、このゲームのストーリー面に限定してのレビューをしたいと思います。
漫画のように簡単に読み直しができないので、確認不足でちょいちょい間違ってるところもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 

登場人物

エリー
前作のヒロインにして今作の主人公。
ゾンビ化する感染症の抗体を持っている唯一の存在。

 

ジョエル
前作の主人公。
前作ではエリーを守るために必死で戦ったメチャクチャかっこいいオッサン。

 

アビー
今作のもう一人の主人公。
ジョエルを殺し、世界中から凄まじいヘイトを集めることになったマッチョ女。

 

前作のざっくりとしたあらすじ

ゾンビ化する感染症により文明が崩壊したアメリカ。
そんな中、抗体を持っている特別な少女「エリー」と、彼女を「ファイアフライ」という組織に送り届けることになった運び屋「ジョエル」との、アメリカ横断の旅が始まりました。
最初は反発していた2人でしたが、徐々に絆を深めていき、とうとうファイアフライの元へ辿り着きました。
しかし、ワクチンを作るにはエリーが死ななければならないことを知ったジョエルは、その場にいたファイアフライの兵士や医者たちを殺し、エリーを助け出しました。

 

今作のざっくりとしたあらすじ

「ジャクソンシティ」というコミュニティで平穏に暮らしていたジョエルとエリーでしたが、ジョエルは「アビー」というマッチョ女に殺されてしまいます。
アビーは「WLF」というファイアフライの残党で構成された組織の一員で、前作のラストでジョエルに父親を殺されていました。
アビーはその復讐で、あろうことかエリーの目の前でジョエルを撲殺してしまうのです。
復讐の鬼と化したエリーはWLFの連中を殺しまくりながらアビーを追いかけます。
しかしアビーに返り討ちにあってしまい失意のうちにジャクソンシティに戻ります。
このままジャクソンシティで恋人(♀)と暮らすかに思えたエリーですが、ジョエルの死の光景が頭から離れず、アビーの足取りが判明したことで再びアビーを追いかけます。
しかしようやく見つけたアビーは「ラトラーズ」というヒャッハー集団に捕まって痩せ細っていました。
エリーはアビーを解放するものの、戦いを強要。
戦いと葛藤の末、エリーはアビーにトドメを刺すことなくジャクソンシティへと戻りました。

 

ストーリーの構成

ざっくりわけるとこんな感じでしょうか。

序章:ジョエルが殺されるまで
エリー編:エリーによる復讐の旅。アビーと対峙するまで
アビー編:アビー視点でのエリー編の裏側。エリーを返り討ちにするまで
最終章:エリーが再びアビーを追う。エリーvsアビー、最後の戦いとその後

 

肯定的な意見から

前作も素晴らしく、胸を打つ作品でしたが、今作は胸をえぐるような作品でした。
この感情は数日経っても収まらず、とうとうレビューをせざるをえないところまで来てしまいました。
良い悪いはともかく、スゴイ作品であることは間違いないです。
おそらく一般プレイヤーよりも、クリエイターに与える影響の方が大きいのではないでしょうか。

ストーリーに込められたメッセージも素晴らしいと思います。
簡単に言ってしまうと、「復讐の連鎖は断ち切りましょう」ということなんですが、その断ち切る際の、いわば我慢する立場の人間の葛藤や苦悩というのをきちんと描いているのが素晴らしいと思います。
つまり、「復讐の連鎖は断ち切りましょう」と言いつつ、それが簡単ではないということもきちんとメッセージに込められているわけです。

 

否定的な意見

スゴイ作品であることが間違いない一方、否定的な意見が寄せられているのも物凄く理解できます。
前作であれだけ頑張ったジョエルが早々に、それも残酷な殺され方をしたことに、深い悲しみと怒りを抱いたプレイヤーが続出。
エリー編では、エリーと同じように復讐に燃えてプレイをしたはずです。
そんなプレイヤーが、アビー編で突然、仇であるはずのアビーの操作を強要されたわけです。
ここでモチベーションが落ちたというレビューが結構聞こえてきますが、まぁ無理もないと思います。
最後のエリーの決断も、「復讐を成し遂げてほしかった」「アビーは殺してほしかった」「スッキリしない終わり方だった」という評価になってしまいました。
まさに「復讐の連鎖を断ち切ることは簡単ではない」ということの証ですね。

 

こうすればよかった

ではどうすればよかったのか、大きく分けて3パターンあると思います。
一つは、「そもそもジョエルを殺すべきじゃなかった」です。
これはもうストーリーの根幹が崩れて別物になってしまいますね。
二つ目は「アビーを殺して復讐を成し遂げてほしかった」です。
プレイヤーはスッキリする人が多いかもしれませんが、その分メッセージは無に帰します。
では三つ目、「プレイヤーがアビーを殺さなくてもいいと思うようにすればよかった」です。
そもそも制作陣は、この三つ目が狙いだったと思います。
アビーを操作させて、アビーに感情移入させて、「アビーも助けてあげて」とプレイヤーに思わせたうえでエリーvsアビーの最後の戦いを迎えるはずだったのではないかと思います。

しかし予想に反して、というか予想以上にジョエルが偉大過ぎました。
そして、エリーとジョエルの絆が強すぎました。
それに対してアビーへの感情移入のさせ方が不十分だったと思います。

 

アビーに感情移入できなかった理由

復讐する理由に納得がいかない?

アビーの復讐の理由はもちろん「父親がジョエルに殺されたから」なのですが、ジョエルやプレイヤーからしたら、「だってエリーが先に殺されそうだったんだから仕方ないじゃん」と言いたくなりますよね。
正確には、アビーの父親は医者で、武器も持っていなかったので殺さなきゃいけないほどではなかったのですが、組織の一員なわけですし。
とは言え、ファイアフライの方も「人類を救う」という大義のもとの行動なので、殺されなきゃいけない悪人というわけでもありません。
結果として、ジョエルの行動により人類は救われる機会を失い、多くの人が死ぬことになりました。
ここらへんは前作の時点で、「大切な人の命と人類の未来のどちらを選ぶか」ということを考えさせられ、答えに詰まった人も多かったのではないでしょうか。
その難題が今作にも引き継がれ、プレイヤーの中でも「ジョエルが殺されること自体はしょうがない」という意見は結構あったように思えます。

 

復讐の仕方がやり過ぎでは?

述べた通り、復讐すること自体の是非は微妙なライン上にあると思います。
妥当とも言えるし、逆恨みとも言えるし、という状況です。
しかしそれにしては「復讐の仕方が残酷すぎたのではないか」というところで納得いかなかった人が多かったのではないでしょうか。
何の罪もない人を自分勝手な理由で殺したヤツに対する復讐だったらわかりますが、ジョエルの行動はあくまで「エリーの命を守るため」であって、そんなのはエリーに反論されるまでもなくわかっていたはずです。
にもかかわらず、ジョエルのことをクズ呼ばわりし撲殺したのは納得いきません。
しかも直前にアビーはジョエル達に助けられてるわけですしね。
エリーが復讐を葛藤し最終的にアビーを見逃したのと比べると、アビーの復讐はあまりにも行き過ぎていて、自分勝手すぎると感じてしまいます。(まぁ実際はエリーもWLFメンバーを殺しまくりましたが)
せめてアビーに「復讐前の葛藤」や「復讐後の後悔」があればよかったのですが、そういったことを明確に示すシーンがなかったように思えます。

 

アビーの復讐関連の苦悩描写が少なすぎる

アビーの苦悩は「ジョエルへの復讐」関連よりも、元カレ「オーウェン」の心配と三角関係、宗教組織「セラファイト」関連の方が多かったと思います。
父親を殺されたことに対する苦悩も描かれてはいましたが、ジョエルを失ったエリーの苦しみの描写と比べるとほんの少しです。
もちろん苦しんだからこそ復讐まで至ったんでしょうし、ごく普通の少女だったアビーが5年くらいの月日で、ゴリラと形容されるほどマッチョになったのも、よくよく考えれば相当な苦労があったんだとわかります。
ただ、だからこそそれを見せてほしかったですね。
たぶん、ストーリー構成やゲーム性などを考慮して、エリーの復讐の旅の真裏の期間をプレイさせることになったんだと思いますが、感情移入させるのに重要だったのはアビーが復讐を果たすまでの期間だったと思います。
父親が殺される悪夢にうなされる日々と、復讐を誓い体を鍛え、危険な任務も必死でこなす、という姿を見せてもらっていれば感情移入しやすかったと思います。
また、父親が殺される悪夢が、ジョエルが父親を残酷に殺したという悪夢に段々と変わっていくという展開にすれば、それが思い込みだったとしても、「アビーが残酷な復讐をせざるをえない精神状態になったのはしょうがない」とも思えたのではないでしょうか。

また、復讐を果たした後に復讐したことを後悔するような描写をガッツリと作ってほしかったと思います。
仲間が殺されたことや、返り討ちにしたエリーにトドメを刺さなかったことなどで、「多少後悔はしてるのかも」とは思いましたが、その程度です。
やはりこれもエリーと比較すると少なすぎで、「エリーは苦しんだのにアビーは復讐を成し遂げてスッキリしやがって」と感じてしまいます。
ここらへんを、
”復讐を成し遂げたにも関わらず父親が殺される悪夢は続き、それどころか、自分がジョエルを撲殺したように、ジョエルが父親を撲殺するという悪夢に置き換わるようになってしまった”
とすれば多少は胸がすくプレイヤーも多かったと思います。
他にも、エリーの復讐を巡って仲間割れがおきる、という展開が欲しかったですね。
というか、エリー編でアビーがWLFから逃げただのなんだの騒いでたのはそういうことかなと思っていたのですが、全然違ってて残念でした。

 

アビーの色恋沙汰は要らない?

エリー以上に苦しむ姿を見せてようやく釣り合いがとれるかもという状況で、色恋沙汰にうつつを抜かしてしまったのはかなりのマイナスポイントだと思います。
ましてやそれが、妊娠中のNTR行為ですから、感情移入どころか嫌われる行為ですよ。
「好きな男性はいたけど復讐が優先だったので恋愛はしなかった」、「復讐のために女性としての幸せは捨ててしまった」という描写ならいいと思うんですが。
ものすごく好きでたまらない相手だけど、妊娠してる女性のことを思って身を引く。それでも2人(生まれてくる子供も含めると3人)の幸せを心から願う、という健気で心優しい女性として描いたうえで、エリーにその2人が殺される、という展開にしていれば、全然違ったと思います。
NTRしたうえで女性から「あなたは来ないで」って突き放された状態で2人が殺されたって、「かえってよかったじゃん、ざまぁって思ったんじゃないの?」とか思ったり思わなかったりしません? そう思う人は性格が悪いでしょうか(;^ω^)

 

総評

制作陣がやろうとしたこと、伝えたかったメッセージは素晴らしかったと思います。
エリー側も素晴らしかったと思います。ジョエルとの思い出シーンは泣けました。
問題はアビー側です。
2人の相対する立場の主人公を作り最後に対決させる、という構成にする以上、片方に魅力がないと一気に崩れちゃいます。
ましてやエリーとジョエルの絆は前作から濃密に描かれましたから、アビー側をよっぽど頑張らないと釣り合いがとれないのはわかりきったことでした。
にもかかわらず、余りにもお粗末だったと思います。

こうやってまとめてみると、不十分どころかマイナス面がかなり目につきますね。
本当は褒めるつもりでレビューを書き始めたんですがw
何度も言いますが、やろうとしたことやメッセージは素晴らしいと思うので、アビー編を丸々作り直してくれないかなぁ、と切に願うところです。