【漫画レビュー】ペット リマスター・エディション 全5巻
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
作品名:ペット リマスター・エディション
作者:三宅乱丈
連載誌/レーベル:ビームコミックス
出版社:KADOKAWA
ジャンル:青年マンガ
ebookjapan紹介文より『ぶっせん』『イムリ』と常に話題作を送り出し、唯一無二の個性を発揮し続ける鬼才・三宅乱丈の代表作、大きな話題を呼んだサイキック・ロマン巨篇が、全編にわたる徹底的な加筆修正と150ページ以上の描き下ろしクライマックスを加えた「完全リマスター・エディション」が、ここに新生!数々の話題作を手がけるジェノスタジオによって、アニメ化が決定!!監督を務める大森貴弘氏が10年以上、映像化を切望していた本作。シリーズ構成は『夏目友人帳』で大森氏とタッグを組んだ、村井さだゆき氏。 【イントロダクション】人の脳内に潜り込み、記憶を操る能力を持つ者達がいた。彼らのその力は、事件の揉み消しや暗殺など、裏の世界で利用されてきた。人の精神を壊すほどのその力は、同時に彼ら自身の心を蝕んだ。彼らはお互いを鎖で縛り付け合うように、脆く危うい心を守った。彼らは恐れと蔑みからpet(ペット)と呼ばれた。
設定がすごい漫画です。
構成も複雑で、天才的といったレベルです。
ストーリーも簡単に紹介できるレベルではないので、ざっくりとした「作品紹介」という形でレビューしてみたいと思います。
登場人物
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
悟(さとる)
主人公だと思います。子供の頃は能力のせいでマトモな状態ではなかったのですが、林により救われます。
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
林(はやし)
悟の恩人です。過去から現在においても重要な役割を果たしています。裏の主人公と言ってもいいかもしれません。
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
ヒロキ
もしかしたらこっちも主人公かもしれません。悟にとっての林のように、司に救われたため、ホモ疑惑が出るレベルで慕っています。
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
司(つかさ)
ヒロキの恩人です。いい人かと思いきや実は・・・というやつです。逆に主人公かもしれません。
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
桂木(かつらぎ)
クソ野郎です。主人公の上司です。やたらと偉そうですが、そのくせいい加減な仕事をするので、その尻ぬぐいを主人公らが行うことになったりします。
ざっくりとしたあらすじ
主人公の悟くんは、生まれつき特殊な能力をもっていて、その副作用で自閉症?みたいな状態になっていました。
そのことに気付いた「組織」が悟くんを仲間に引き入れようとします。
「組織」の一員である林さんにより悟くんの症状は治りますが、その代わり両親は殺されて、祖母も廃人にされてしまいます。
ぶっちゃけ林さんが「いい人」そうなので混乱しますが、この組織は実際のところ「悪の組織」というヤツです。
そんな「悪の組織」にいいように使われている主人公たちが、その組織から逃げ出そうとする物語です。
能力について
この漫画の見どころは、なんといってもこの能力です。
他人の精神に入り込み、記憶を改竄したり操ったり廃人にすることができます。
現実なのか幻なのか区別がつかなくなる描写や、「不思議の国のアリス」のような精神世界の描写が素晴らしいです。
出典:ペット リマスター・エディション 1巻より
さらにこの能力で重要なのが「ヤマ」と「タニ」の存在です。
「ヤマ」とは、嬉しかった記憶の中でも特別なもの、
「タニ」とは逆に、辛かった記憶の中で特別なものです。
「ヤマ」と「タニ」どちらかでも壊してしまうと廃人になってしまうという設定のおかげで、物語はより複雑で面白くなっていきます。
ちなみに、楽しい記憶「ヤマ」がなかった悟は、林さんから「ヤマ」を分けてもらったことでマトモになることができました。
めっちゃ複雑な愛憎劇
展開や真相が二転三転します。
そもそも能力のルールが複雑なので、ぶっちゃけ一回読んだだけでは完璧に理解できないかもしれません。
歪んだ友情や愛情が複雑に交錯していくのも見どころです。
これだけ複雑なのに物語が破綻しておらず、登場人物の心情の変化も納得のいく流れになっているのは見事というほかありません。
作者は相当頭がいいんだろうなと思います。マジで
完結していません
5巻で完結するものと思って読んでいたら完結しませんでした。
あとがきによると、この全5巻は、もともと3部構成で考えていたストーリーの第2部にあたるそうです。
で、第1部は回想という形で第2部に混ぜてあるので、残るは第3部のみということになります。
それでその続きは、
もし描く機会にめぐり逢えた時には、どうかまた、よろしくお願い致します💛
2010年 初春 三宅乱丈
ということらしいです。
既に10年も待たされているうえ、
「描く機会がなかったら?」と不安になってしまいますね。。。
ただ、2006年から同作者が連載している「イムリ」のクライマックスが近いのと、2020年に「ペット」がアニメ化されたところなので、
続編の話が進行中なんじゃないか、と予想しています。たぶん…
まぁ一応このままでも話としてはまとまってはいるので、これで終わりでも許される範囲かなとは思います。
「俺達の戦いはこれからだ」エンドの中ではハイクオリティなのではないでしょうか。
もちろん続編を望みますが。
総評
わたし的には大満足の漫画でした。ただ、
絵柄が苦手という人もいるかもしれません。
複雑な話が苦手という人もいるかもしれません。
続編が描かれないまま10年以上経過している。
そこらへんがマイナスポイントかなと思います。
ですが、設定・構成・人間関係・心理描写など、類似する作品を探すのが困難なオリジナリティの高い唯一無二の漫画です。
是非、読んでみてください。