かってに漫画レビュー

漫画を勝手に分析したり考察したりして感想を書いていく予定です。

【漫画レビュー】リボーンの棋士 1巻

出典:リボーンの棋士 1巻より

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作品名:リボーンの棋士

作者:鍋倉夫

連載誌/レーベル:ビッグコミックスピリッツ

出版社:小学館

ジャンル:青年マンガ

ebookjapan紹介文より

敗北は逆転の母! 挫折の底は再生の胎内!! プロ棋士養成機関・奨励会で、四段に上がれないまま26歳になった安住浩一は、年齢制限の掟により退会させられ、プロへの道を閉ざされた。そこからは、人から距離を置かれ、年下からも見下される日々。それでも安住は、明るく笑顔で前向きに振る舞った。嫉妬は、湧いてもそれをかき消した。そうしているうちに、眩いほどのプラスオーラが身についた。将棋を忘れて、この生き方でいいはずだ、とも一時は思った。しかし、人生から将棋を切り離せなかった。アマ棋士としてのリスタートを決意する、安住。その棋風は以前とは違う、まったく新しいものに進化していた。

将棋漫画です。

将棋のプロの養成機関「奨励会」でプロを目指し、あと一歩でプロ棋士の夢を断たれた男の物語です。

と、読んだことのある人は将棋漫画「ハチワンダイバー」を思い出すのではないでしょうか。

そう、この初期設定は全く一緒です。

しかし「ハチワンダイバー」の主人公が「真剣師」という賭け将棋の道に進むのに対して、この漫画の主人公は「プロ編入制度」を利用し、再びプロ棋士を目指すという物語です。

現時点で6巻まで発売されていますが、どうも次の7巻で打ち切り?らしいです。

面白いと思ったんだけどなぁ・・・ということで、第1巻のレビューを中心に、どこが駄目だったのかを考察してみたいと思います。

 

登場人物

出典:リボーンの棋士 1巻より

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安住浩一

29歳。元奨励会員で、現在はカラオケ店でバイトをしている。

 

出典:リボーンの棋士 1巻より

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土屋貴志

29歳。元奨励会員で安住の同期。現在は父親の経営する工場で働いている。

 

出典:リボーンの棋士 1巻より

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片岡豊

34歳。将棋の道に進みたかったが父親が許さず、奨励会にも入会することなくエリートサラリーマンとなった。

 

1巻のあらすじとレビュー

第1話:挫折からの再起

ニコニコとカラオケ店でバイトをしている主人公の「安住」。

彼は元「奨励会員」で、26歳までにプロになれなかったために年齢制限で退会。それから3年間、将棋を避けて生活をしてきました。

ですが、そのことを知らないバイト仲間の「森」との会話をきっかけに、再び将棋を指すことを決意します。

と、これが第1話です。

とんでもない挫折からの再起の割りにはあっさりと自己解決したなぁという印象でした。「過去の自分との対話」という工夫もしてたんですけどね。

今後も主人公は精神的に強くなったという設定のためか、いつもニコニコとあまり悩まずにピンチを乗り越えていく印象です。

後で出てくる主要人物「土屋」の方が、苦しんで悩んで乗越えるという様を見せるので、そっちの方に感情移入する読者も多いんじゃないかなと思います。

 

第2話:プロ棋士に勝利

「森」に誘われて将棋まつりというイベントに参加することになった安住。

そこの指導対局で、奨励会時代に敗北した「明星六段」というプロ棋士と対局することになりました。

そして「指導対局」とはいえ、勝利します。

と、どうもスゴイことのようなのですが、主人公のリアクションのせいか、これまたあっさりとした感じで終わってしまいました。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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3年間、将棋を避けて苦しんできた男には見えないんですよねぇ

 

ちなみに、個人的な好みを言うと、1話と2話をつなげて、

将棋を避けてきた主人公がムリヤリ将棋まつりに参加させられて、対局しているうちに「やっぱり将棋が好きだ」となる展開にした方が、ベタだけど良かったんじゃないかなと思います。

 

第3話:「土屋」登場

3年間のブランクを感じさせず将棋センターで将棋を指していた安住でしたが、そこに「土屋」が登場します。

安住と同期の元奨励会員で、彼もまた年齢制限によりプロを諦めた一人でした。

この土屋が、プライドが高く無愛想で明らかに性格が悪い奴なんですが、辛さや悔しさを素直に読者に見せてくるので、どうにも応援したくなるんですよね。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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からの

出典:リボーンの棋士 1巻より

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これですからね。

無愛想で感情を表に出さないキャラかと思いきや、安住に負けて涙目です。

 

この後、将棋センターの人たちにアマチュアの大会に出ることを勧められるものの、

土屋は「今さらアマチュアの大会に出てなんになるんだよ。勝っても負けても虚しい思いするだけだ。あの人達には俺達の気持ちがわからねえんだ。」と乗り気ではないのですが、(やっぱり性格悪いよなぁ)

安住は出場することを決意します。

 

第4話:悩む「土屋」

早々にアマチュア大会出場を決意した安住に対して、土屋は迷います。

ちなみに土屋は、父親の経営する工場で働いていますが、職場でも家庭でも無愛想です。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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……母ちゃんも口悪いな。

それに対して土屋は楽しくもねえのに笑えるかよ。

そして

出典:リボーンの棋士 1巻より

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ガンバレ土屋

安住の

出典:リボーンの棋士 1巻より

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という言葉よりも、よっぽど将棋が好きなんだと感じられるシーンです。

そして、2人とも「アマチュア竜王戦 東京都予選」に参加することになりました。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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なんというツンデレ

 

第5~7話:安住vs片桐

さて、安住の初戦の相手はアマチュア最強と言われる「片桐」というアマ名人となりました。

主人公の対戦相手にふさわしい強敵と言ったところですが、何故か土屋が闘志むき出しです。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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どうやらエリートサラリーマンというところにカチンと来たようです。

東大卒のエリートサラリーマンなうえ、将棋でも「アマチュア最強」と持て囃されている…土屋でなくとも気に入らねぇとなっちゃいますよね。

ただ、片桐も別に嫌なヤツというわけでなく、プロ棋士になるという夢を叶えられず、むしろ父親の反対で奨励会に入ることすらしなかったことを後悔しており、大人になってからプロ棋士になる夢を追いかけ始めた努力家。という割と好感が持てる男でした。

2巻以降もそうなのですが、主人公よりも対局相手を掘り下げる形になることが多いです。

スポーツ漫画なんかではよくあるのですが、毎回毎回特殊な感じの敵を出すと主人公の特別感が薄れる気がして、個人的にあんまり好きじゃありません。

本当に重要なキャラクターならいいのですが、この漫画でも、4巻で戦う中学生あたりから「主人公を差し置いて急に出てきたキャラクターのドラマを掘り下げんでも」と思っちゃいました。

ただ主人公ばかり活躍するのもどうかと思うし、そこらへんのバランスの取り方は難しいんでしょうね。

 

この後は、安住、土屋、片岡、3人とも予選リーグを突破。決勝トーナメントに進出します。ちなみに、それぞれ決勝トーナメントのブロックがバラけたので勝ち進んでも対戦することなく全国大会に進めるそうです。

出典:リボーンの棋士 1巻より

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ほんとにいいキャラしてますよね土屋。

  

プライドが高く無愛想だがツンデレ

主人公のことをライバル視しつつ実力を認めている。

あ…これベジータじゃね?

と思ったところで1巻終了です。

 

総評:主人公のキャラクターが問題?

「挫折を経験した男が、再び夢を追いかける」

というシチュエーションは個人的にツボなのですが、

主人公をいつもニコニコさわやかキャラクターにしたせいで、挫折から這い上がる感が弱くなって、盛り上がりに欠けることになってるのではないか思います。

敵とも和気あいあいとした感じで対戦するので、「勝たなきゃ」という真剣さも弱く感じます。主人公が強いので苦戦までいかないというなら、それはそれで、漫画でよくある主人公をバカにしていた敵をコテンパンに倒してざまぁするというパターンにすれば盛り上がったんじゃないかと思いますが、それもまた、さわやか好青年の主人公をバカにする敵が出てこなかったんですよね。

 

 

とは言うものの、結局は面白いと思ったから買って読んでたわけですので、

あえて苦言を呈するならというレベルの話です。

 

なんにせよ次で最終巻。

うまくまとまればよし。そうでなければ…

というところですね。

8月末に発売予定らしいので、その頃にどうだったか報告したいと思います。